予想通り早々と沈んだU-23オリンピック代表

戦前の予想通りに、U-23は2連敗で早々とグループリーグ敗退が決定。

多くのサッカーファンの予想・危惧した通りであったとはいえ、ここまであっさりとやれちゃあ、怒りを通り越して呆れてしまう。

反町監督のコメントもナニ? 「悔いは残っていない」??…ふざけないでいただきたい。

これだけの日数と強化費をかけてコレかい?

勝ち負けはいい。内容的にサッカ−ファンも日本国民も納得させられるものでは全然なかったじゃないか。

こっちはたいへんな悔いが残っているよ。

サッカーファンやサッカー関係者がどれだけ肩身の狭い想いをしているか、少しくらい考えられる人間になれよ。詫びくらいしたらどうだ。

私は前回、初戦のアメリカ戦について、まず「(よくて)引き分け」と書きました。これは、アメリカもA代表の凄まじい運動量とプレスを見れば危険なチームではあるけれどもU-23はそこまで大したことはないだろうし、仮に大したことがあってもこれに勝たなくては次のステージへ進めないのだから、それなりの準備をした上で臨むだろうから相応のパフォーマンスを見せてくれるだろう…でも日本も得点力がないので奪えても1点、だからせいぜい引き分けだろう、ということだったのだ。

次に「勝てるかもしれない」と書きました。これは最近耳に入ってくるアメリカの評判が大したことはなさそうだったので、それなら勝てるだろうと考えたのだったのだ。そして最後に「3連敗もある」と書きました。これは、このグループに決まった時に真っ先に思ったことだったのだ。

そして、アメリカ、ナイジェリアに見事に2連敗。

オランダ戦がもう1試合残っているが、最初の予想(3連敗)が見事に的中か? アホらしい。

選手たちに迫力がないとか、ゴールへ向かう姿勢が不足しているとか、そういう批判も数多くあるようですが、それに反論するものではありませんが、それよりもやはりこのチームは、チームづくりそのものがチープであったと思っています。

まずアメリカ戦。最近のテストマッチを観ても、1トップで、その下に谷口を置く4-2-3-1で行くのかなあと思ったら全くそのとおり。これが反町氏の至った結論なんですね。

それで、なんで谷口なの?

いや、谷口は得点感覚も高いし、国際試合においても身体で負けないものを持っている。でも中盤の選手。

それを1トップ下で起用してゴールを期待するなんて、よほど策がないんだなあ。

実際にアメリカ、大したことなかったでしょう。
全然勝てる試合。前半で2点は取れた試合。


それを相変わらず決めきれないで、後半立ち上がりにボーっとしている間に失点。それも、左サイドバックの長友が後半は狙われまくりで、後半早々にここを突破されての低いクロスを水元がクリアしたが、これが相手にとってはちょうどいいシュート練習になるようなボール、あんなクリアはあるかい? それをズドン!

ここでも中盤底(アンカー)本田拓也の戻りが甘い甘い。

あんなシュートを撃たせちゃいけない。

そしてゴールキーパーの西川、キミはもうA代表のGKを任せてもよいくらいの逸材だが、なぜあのシュートは脇の下をすり抜けたの? がっかり。

そして、ビハインドになったらそのように決めていたのだろう、フォワードを2トップにして、「4-2-3-1」から「4-2-2-2」に変えてきた。そして中盤底の梶山を下げて谷口を低い位置へ動かし、アンカーの本田拓也はそのまま。中盤前目の本田圭佑と香川もそのまま。梶山には前回ダメ出ししたけど、それでもこの試合でも何も変わっていなかった。交替は当然だろう。だが、本田拓也や本田圭佑に展開力やゲームメイク能力が全くないので、かえって攻撃の形が作れなくなった。

それは梶山がやっぱり必要だったというよりは、梶山よりももっとゲームメイクができない選手ばっかり残してしまった、ということだ。

本田拓也が、梶山がいた時間帯よりも積極的に前へ飛び出そうとしているのは見て取れたが、いかんせん本田拓也だもの。大学サッカーレベルの飛び出しとボールを受けてからの技術じゃぁなぁ〜。

センターバックの森重。キミはなかなか守備面ではいいプレーだったよ。

最近のU-23のテストマッチでも結構ポイント(ゴール)ゲッターであったことも知っている。そのキミの上昇気流が、このチーム立ち上げ当初から守備の要だった青山を蹴落として最終メンバーに残らせたのかね。

だがね、前半のあの場面はなんだい?

右サイドを内田が突破しての速いグラウンダーのクロスに、あれは柳沢敦の2006年ドイツ・ワールドカップにおける伝説の「QBK」(Q=急に、B=ボールが、K=来たので)の再現かい? 試合後のインタビューで「自分は守備の選手だから」などと言っていたらしいが、そういうもんじゃないだろう。守備の選手は「QBK」していいのか?

誰であろうとどのポジションであろうと、体でゴールに捻じ込まんかい。

続いてナイジェリア戦。梶山を使わないで細貝を起用した。細貝のほうが梶山よりも攻撃センス・マインドがある。実際にこの試合でもサイドを駆け上がったり前線を追い越していくシーンもあった。

だから細貝の起用は理解できる。
それでも途中から、やっぱり梶山を入れてきた。なんで?


しかし、それにしても日本の攻撃は厚みがなさすぎる。

もっとリスクをかけて、2列目や3列目の選手がゴール近くまで押し上げてこないと(ナイジェリアの2つのゴールはまさにそれだったわけで)。世界的なストライカーがいるわけではないのに、いくらサイドを突破してもペナルティエリアに1人しか入って来ないんじゃあ、ゴールを奪えるわけがない。

それといっつも思うのだが、サイドバックが攻撃参加した時にチャンスが生まれる、みたいなことを判で押したようにTV解説者が口にするのだが、そりゃあそうだが、最後方からサイドバックの上がりでもってやっと攻撃の形が作れるんじゃあ、そりゃダメだよ。

サイドバックよりも前の選手たちで攻撃の形を作ってくれよ。

サイドバックのオーバーラップでなく、中盤から前だけでサイドアタックを構築してくれ。それにサイドバックの上がりが加わるとさらにもっと厚みのある攻撃になるとか、たまに中盤を追い越してサイドバックがオーバーラップすることでバリエーションが増えるとか、そういう風にしてくれ。サイドバックの選手が可哀想だ。負担が大きすぎる。ブラジルじゃないんだから。6月のユーロ2008(ヨーロッパ選手権)を見ていても、中盤より前の選手たちでサイドアタックを繰り広げていたじゃないか、それに時折サイドバックの選手も入ってくる、と。

あと、4-2-3-1というフォーメーションは基本的にカッコいいのだが、2列目の3人が流動的にクリエイティブに相互作用し合うのが醍醐味なんじゃないのか? 2列目の選手たちが1トップとどんどん絡んで行くというダイナミズムが、このフォーメーションなんじゃないのか?

それなのにこのチームは、2列目の3人の連携やコンビネーションが全然ない。
すっごい不思議なシステムだ。


梶山、本田圭佑、本田拓也…反町氏がチーム立ち上げの頃から軸にし続けてきた選手たちだよな。どう考えたって、軸に据える人選を間違ったまま終わりまで来てしまったよなぁ。

ナイジェリアのほうは、この日本戦に余裕をもって試合を運んでいたという向きがあるが、確かにそうかもしれない。フルパワーではなかったと。しかし、私はナイジェリアにも勝てると思ったよ。この日本チームでは無理だけどね。

だからね、選手が情けないと言う以前に、どう見たって選手のコマはそこそこなんだから、監督をはじめとするチームづくりの未熟さを問題視しよう。

もう日本人監督にU-23をやらせるのは止めてくれ。反町氏もこんな体たらくで、次は誰の名前をあげるつもりなんだ。> 日本サッカー協会

そろそろ相応の(適当な)日本人監督のストックも尽きてきたんじゃないか?

ネームがなくても優秀な監督・コーチが世界中にごまんといる。そういう人たちを使って欲しい。

成長時期に優れたコーチに出会えない選手たちのほうが気の毒だ。日本人監督の育成の場(そして大失敗、大失態)を我々は見たいのではない。

オリンピックには1996年のアトランタから4大会連続出場を続けているけれども、ほんと、最低のU-23チームだったよ。

それから、オリンピックにおけるサッカーは、もしかすると近い将来にはU-20とかになる可能性もある。既に検討が始められているとも聞く。サッカーファンが、必ずしもサッカーに詳しくない日本国民に対して恥ずかしい想いをするようなことは、まちがってももう起こさないでくれ。もはやとっくに、「サッカー」は日本のトップスポーツの一角だろうが。

「サッカー」が全世界相手の最も激烈な種目であることくらいは、サッカーにそんなに関心のない人でも知ってきた。それもほんのこの十数年で劇的にその認知・認識を広めたのだから、ある意味で奇跡的なことだ。だからこそ責任を持ってくれ。

負けたって、日本のトップスポーツの一角らしいものを見せてくれ、残してくれ。

ところで、アジア予選を勝ち抜いてこのオリンピックに出場しているアジア各国(それに開催国の中国)も、グループリーグ敗退の危機だ。もしかしたらアジア代表は全滅になるかもしれない。本当にそういうことになったら次回の本大会出場枠にも大きく影響する。今大会はアジア枠は「3」(開催国の中国を除く)だったが、それが減ることだってありうるのだ。

日本女子代表(なでしこJAPAN)は思わぬ誤算でグループリーグの2戦を終えていたが、今夜、グループリーグ最終戦で、これまで2戦2勝でしかも失点0、グループ1位通過を狙う強豪(オリンピック優勝経験のある)ノルウェーと対戦。崖っぷちの頑張りでもしかして勝つことがあっても2-1くらいの「辛勝」だろうと思っていたら、前半に先制を許すもすぐにファインゴールで追いつき、後半立ち上がりから前に圧力をかけてきたノルウェーの猛攻を凌いで、2連続ゴール…その後もゴールを重ねていって、なんと5-1の大勝。

「逆サイド来い!」「(シュート)打っとけ!」「(こっちに)出せ!」「シュートまで持って行け!」なんていうTVの前での私たちの声がそのとおりになって返ってくる、痺れるような試合だった。

こんな試合ぶりが男女を問わず、日本チームの方向性なんじゃないのか。女子代表をお手本にしたほうがいい。それにしても、素晴らしい試合だった。少し溜飲が下がった。ありがとう、なでしこ。

(2008/8/12)