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5月27日に行われたキリンカップの第2戦、パラグアイ戦だが、意外にも見所が充分あった。それはパラグアイの守備だ。 相手ボールフォルダーへのアプローチが遅れていても、粘り強く、ねちっこく、競り合いに負けない。フットボールは手でボール扱えないのだけれども「フットボールは手の使い方が(手の使い方も)重要」というのをまたあらためて勉強させてもらった。これは手を使ってファウルをするという意味ではないよ。 フットボールは手でボールを持ったり投げたりしてはいけないだけで、手の使い方も非常に重要なのだ。格闘技だからね。 それと、パラグアイの守備は、相手がボールを持つと、周辺をやや緩やかに3人ほどで囲んで、その死角から多少遅れようとも(あるいは、あえてディレイ気味に)ヒタヒタともう1人が突き(ツツき)に行く、その次にワァ〜と囲みが迫って行く。 やぁ、面白かった。元々パラグアイは守備に定評のあるチームだが、なんてたって現在、ワールドカップ・南米予選で首位をキープ(南米予選はグループ分けはなし。とにかく総当り。だからブラジルやアルゼンチンとも必ずホーム&アウェイでガチンコ勝負する)しているのだから。6月にはワールドカップ予選でのブラジルとの対戦があるので楽しみにしておこう。 さて、肝心の日本代表だが、ぶっちゃけ退屈だったぞ。もっと魅力的な試合を見せてくれ。キリンカップの“優勝”だのナンだの、どうでもいいのである。 だいたいこの試合、攻撃のフォーメーションは何だったの? 巻のワントップで、その下にシャドーで山瀬、2列目に中村俊輔、松井、遠藤の3枚ということ? そして中盤の底(2.5列目)に鈴木啓太と中村憲剛ということ? 意図やシステムが見えないんだよ。 特にワントップ下のシャドーに置かれた山瀬、全然ダメじゃん。あんな動きじゃ、このフォーメーションの意味がない。失敗だね。 で、6月2日のワールドカップ予選・オマーン戦に向けたトレーニングに関するごく最近の報道によると、ワントップは玉田で、その下に中村俊輔、松井、遠藤の3枚ということらしいが、それでゴールが奪えるのか? ワントップにするなら、両翼にサイドアタッカーを置いて、そのスピードと突破力を求めるか、ワントップ下のシャドーを置いて文字通りシャドー「ストライカー」としてのシュート力とゴールセンスを求めるか、そういう、ペナルティエリア近辺およびペナルティエリア内で相手守備陣に脅威を与えられるシステムでないと、フォワードの枚数が1枚なのだからゴールを奪うためのフィニッシュの手数が絶対的に足りないだろう? ましてや、ポストが得意なわけではない玉田をワントップに起用するのだったら、どんどん2列目がスピード充分に相手ゴール前に顔を出してこないと。 どうも、やろうとしていることがよくわからん。 それだけ、日本代表チームのフォワードに決定的な選手、それぞれに明確な個性を持った選手がいないということだな。 じゃ、2列目の選手にゴールを決めさせることのできるシステムを構築するしかないだろう? それがコレなの?? ウ〜ム。。。 こりゃまた苦労しそうだな。しっかし、全然チームができて行かないじゃん! さらにその後の報道では、シャドーの位置に大久保を入れてみているとか。そのほうがまだ理解できる。でも、それじゃ2トップでイイんじゃないか。どうもやろうとしていることが中途半端だなあ。それともワントップでも、両翼にサイドアタッカー(ウインガー)を配置し、ワントップ下にシャドーを置くとか、それくらいしたらどうなのか。確かに日本チームの最大のウリは中盤の選手層の厚さだ。けれども逆に、中盤の選手を無理に(?)同時にできるだけ多く起用しようとし過ぎていないか? おっと、システムに関しては少し前にこういう本がリリースされて、結構皆さん喜んで読んでるみたいだよ。 『4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する』 (光文社新書 343) 杉山茂樹・著 著者は以前から“システムおたく”として高名なライターで(しかも、「4-2-3-1」のフォーメーションが大好き)ちょっと疑問なところも多々あるけれど、机上のシステムをフォーメーションの側から一応論理的に読ませること自体は面白いし、読んで凄い楽しいとか勉強になるとか感じる人は少なくないのかもね。ただ、システムや戦術でフットボールの優劣が決まるわけでも勝敗の行方が決まるわけでもないし、フォーメーションで物事が片付くのならこんなに簡単なことはない。でもそれはコンピュータゲームの世界か、もしくは妄想・想像の世界じゃないか(最近のコンピュータゲームだってもっと込み入っている)。 ま、ご興味がおありの方はご一読ください。 ちなみに、フォーメーションの話とシステムの話は、もちろん密接に関係してくるけれども別の話だ。同じフォーメーションだからといって、同じシステムというわけではない。同じシステムを意図していてもフォーメーションは異なる、ということもあろう。 おっと、パラグアイ戦もゴールキーパーは楢崎だったね。 さてさて、6月2日のオマーン戦、勝つには勝つだろうが、ロースコアの接戦になるだろうな。 ワールドカップ予選なので結果がすべてだから、クオリティの高いパフォーマンスやいい試合でなくてよいので…そもそも現状ではそんなのは求めようもないし…勝点3ポイントをキッチリ獲得しましょうぜ。 ところで、日本代表の試合に観客が以前のように入らなくなったと騒いで(一部では喜んで?)いますが。。。 確かに、以前のようなワクワク感とか上昇気流に乗った高揚感は大きく後退した。それに、2006年のワールドカップ・ドイツ大会での惨敗で人気が落ちたとか…それは「代表」にだけしか関心のない一見さんやニワカが足を運ばなくなった要因にはなろうが、それが観客動員数の低下に繋がったとは思わない。逆に一見さんやニワカが増大したことによって、元々のサッカーファンがスタジアムへ足を運ばなくなった現象も発生していたのだから。 ま、これがアジア最終予選とか、ワールドカップ出場のピンチ! とかになると、あの盛り上がりや熱気が蘇るだろう。いかんせん皆、慣れてきてしまった。三次予選くらいでは…ということか。しかしそれは目が肥えてきたということでは、必ずしもないのだが。 それに、ワールドカップ出場が当たり前と思い込むにはまだ気が早い気もするが。 確かに日本チームはアジアでも屈指の強豪かもしれないし、アジアでは最も現代的なフットボールを展開するチームかもしれない。でも、ワールドカップ予選は戦争なのであり、いくら最先端の装備を備えていても戦(いくさ)の勝負が決まるわけではない。そのことを、ユルユルになってしまっている我々はいずれ、いつか痛烈に思い知らされる時が来るかもしれないね。その時、世界規模で展開され国際的な流れとリンクしている、最も国としての力が問われるスポーツ競技種目であるフットボール(サッカー)が、日本において本当に根づいているかどうか。大丈夫だとは思うけどね。 また肝心なことは、サッカーファンはナショナルチーム(代表チーム)よりも自分の身近なチーム(Jリーグのクラブチームなど)への関心がどんどん強くなってきているということだ。 ナショナルチームはどうでもよくなっているとか、ナショナルチームへの関心が薄れてきたとは言わないが、まずは自分のひいきのクラブを第一に考える、という文化・日常になってきた。これは実に正常なことでああって、そうした文化・日常の延長線上にナショナルチームがあるのだから。それは、フットボールネーションなら普通のことだ。そういう意味では、日本もこんなところから、日本サッカー協会やサッカービジネス屋よりもサッカーファンの方が、グローバルスタンダード化してきていると感じる次第だ。 それから、日本サッカー協会のマネジメントの稚拙さが際立つ。 なんで好き好んで平日真っ只中の19時に埼玉スタジアムへ行けますか? 東京方面から埼玉スタジアムへ行ったことのある人ならわかると思うけど、平日に仕事がある人が19時に埼玉スタジアムへ着くのは無理です。そんなマッチメイクすること自体が奇妙だし話にならない。6月2日のオマーン戦だって、週明けの月曜日だよ、しかも新横浜まで(試合会場は横浜国際総合競技場)19時に着けますか? そんな暇じゃないんだよ。 もっと集客のしやすい、というよりも、もっと観客が行きやすいスタジアムでマッチメイクすることだ。 それか、ばかデカイ6万人も7万人も収容するスタジアムでなく、3万人とか4万人規模のスタジアムでイイじゃないか。何をそんなに「日本代表(フル代表)の試合だから」「ワールドカップ予選だから」と言って、国内最大クラスのスタジアムをブッキングするのか。 3万人とか4万人規模のスタジアムのほうが観客にも見やすくて、相手チーム(アウェイチーム)へのプレッシャーが醸し出せるかもよ。スタジアムが大きければよいってものじゃないだろう。 実際、キリンカップの第1戦めのコートジボワール戦は土曜日開催ではあったが豊田スタジアムで行い、キャパの4万人を集めている。東京都内、東京近郊で適当なスタジアムがないのだったら、サッカー専用の地方のスタジアムを使えばいいじゃないか。 ビッグマッチは関東に片寄り過ぎているという不満は、いつの時代になっても解消されていないのだから。 それから、日本サッカー協会も年間200億円もの超巨額予算を持っているのだったら、東京都内に相応しいスタジアムがないと思っているだけでないで(国立競技場は老朽化も進んでいるし、陸上トラックがあるからね。私はあまり勧めない。数多くの歴史を刻んだスタジアムであることはよくよく認識しているけど)、自前で都内に適当なキャパのサッカー専用スタジアムでも造ったらどうなんだ? それくらいやって欲しいね。 (2008/6/1) |