フル代表にU-22にU-17…8月22日は3試合をハシゴ観戦

日本サッカー協会もムチャクチャだよな、8月22日はフル代表は大分でカメルーンとテストマッチ(国際Aマッチ)を行い、U-22のオリンピック最終予選という大事な試合が東京で行われるなんて。それに、韓国ではU-17ワールドカップのグループリーグ第2戦があるというのに。いい加減にして欲しいよ、まったく。

この3試合の中で皆さんにとっていちばん大事と思われる試合はどれだったでしょう? 私はU-17です。

・フル代表のカメルーン戦

カメルーン戦と言えば、翌年にワールドカップ開催を控えた2001年のコンフェデレーションズカップのグループリーグ第2戦(新潟)で、2-0で勝った試合は素晴らしかった。特に1点め、最終ライン左に入った中田浩二の物凄いロングクロスが鈴木隆行にピタリと渡り、鈴木がそのまま対角線ゴールを決めたシーンは名場面だな。

今回のカメルーン戦だが、相手のコンディションが整っていない状態で、結果は重要ではない。テストマッチなんだ。

アジアカップの時よりもアグレッシブな部分が見えて、新しい顔ぶれのプレーも観られて、ちょっとは良かったんじゃないかな。

ただ、現状では客観的に見てカメルーンのほうが強いね。

もしガチの勝負をしなくてはならない場合があったら、相当に対策を練ってかからなくては結果を得られる可能性が高くないだろうね。

スタメンのフォーメーションは、最終ラインは4バック、中盤は3枚を並べ、前線は3トップ気味だった。中盤の3枚は、鈴木啓太と阿部勇樹が低い位置で、その前に遠藤という感じ。前線は変則3トップみたいな感じで、前田遼一をトップに、田中達也と大久保がワイドに開く感じか。これが割と良かったと思う。

やはり日本のフォワードは相手センターバックに対して1人ではシュートに持ち込める強さやスキルや技術や駆け引き等が劣るので、前線に3枚絡むことが必要(もっとも、それでもこの試合でもフォワードはシュートがあったかどうか、という体たらくだったが)。

前に3枚いればボールの出しどころも増える。前にボールを運べなくてイライラするのも減るんじゃないか。

逆に後半、その3人に代わって高松と佐藤寿人の2トップみたいになって、その下に山瀬がいる感じになったのだけど、やっぱり攻撃の停滞感が感じられた。ま、多くの選手が代わったし、中盤の構成力や組織性が落ちてしまったから一概に前線の問題によるとは言えないのだけれども。

しかし、やはり前線に3枚、3トップ気味に前線が機能してくれないと、日本の場合はやりたいことができにくいのではないだろうか。

つまり、2トップ+トップ下のフォーメーションであっても、トップ下の選手は2枚のフォワードの下にドンといるんじゃなくて、ワイドに開くなりフォワードと並ぶような位置取りでボールの受け手になって欲しいな。

日本選手は「トップ下」というと相変わらず“華麗なゲームメイク”が好きな選手が多くてね…それじゃあ困るんだよ。

私は基本的に3トップ気味というのは好きです。

ただ、そうした場合、中盤の守備やスペースが問題になる。だから、この試合では鈴木啓太と阿部勇樹が起用された。それでも、この試合で後半の日本の展開力や有機性が落ちたのは、中盤が機能しなくなったことによるものが大きいと思われる。そこにはやはり前線のシステムの影響もあるだろうし、前線と中盤の構成力・組織性の相関関係と言うべきだろう。

どの選手をどこで使うか、この選手をどう使うか、“このシステムをやりたい”時に、どの選手を使ってどの選手をジョーカーで残すか…“こういう戦い方をしたい”時に、選手の名前とかいくつかの側面での力量だけでなく、チームとしてのバランス・構成・組織性から誰を優先的に起用していくか…フットボールは単なるフォーメーションとか選手の並べ方ではない…そういうのがまた、奥深くて面白いのだが。

・U-22のオリンピック最終予選

心配していたとおり。いまだにチームのベースができていない。監督交替したほうが良いと思う。

ま、メンバー発表を見たときから「結局、平山と心中するつもりなんだな」と思ったけど、平山はアアだし、そもそも平山と心中するしかないのかよ、日本人監督だと。

それと、相変わらずわからないのが梶山だ。
梶山は、これまでU-20などでも、どの日本人監督もが重宝がってきた。中盤の低い位置でのプレイメイカーとして。何がそんなに凄いのかわからん。いや、片鱗は随所に見られる。ただ、それほどまでにチームの核に考えるほどの存在とは思えない。

もしこれで最終予選を勝ち抜けたら、それは同じグループの他のチームがヘタレだということだ。

・U-17ワールドユースのナイジェリア戦

ぶっちゃけ、完敗。
ナイジェリアは、この年代ではモンスター並みの動き、スピード、破壊力だよ、やっぱし。


ただ、非常によく戦ったと思う。前半に2ゴール奪われたわけだが、いい攻撃の形もつくれていた。後半はナンだったけれども。

この試合を観ていて、日本の大いなる可能性は私は確認できたね。

身体的接触と激しい肉体的せめぎ合いのあるフットボールで、世界で戦うために日本がやろうとしているサッカーはやはり間違ってないよ。もっともっと技術の精度なりスピードを上げてね、フィジカルでも負けない日本らしい身体的優位性を作り上げてね(その辺りは “日本サッカーのフィジカル問題に斬り込む” の第2弾を近日掲載しますので、お楽しみに)。

それとすべての選手が自信と精神的余裕を持たなきゃ

(フル代表のカメルーン戦でもそうだった。なんか慌ててるんだよね。本来持っている技術がすぐブレる)。それが備わっていけば、大丈夫、世界と戦って行けます。

“サッカーは日本人に向いてない” などど、ちょっと国際大会で負けるシーンを見るとアンチが煽るけど、スポーツに向いているも向いてないもないし、世界中でどこも力を入れている最激戦競技だからなかなか勝てないのであって、だからこそ、世界に抗していくステップが楽しみであり面白いのであり…格闘技とか陸上トラック競技なんかでも “日本人に向いてない” なんて言うのかい? ほとんど諸国でやられていない種目で日本がイイところを見ることがスポーツ観戦だと思っている人には、わからないだろうけど。

アジアカップの総括もやっとこうかね。私のところにも多くの意見なり苦情が届いております。

・3位決定戦にはヘコんだんだけど…

スタメン代えるかと思っていたら、それまでと基本的に変えてこなかったね。これは意外だった。オシム的には、もう一度チャンスを与えたのだろうか。私は同意できなかったけど。

内容は確かにフラストレーションたまるものだった。試合を終始支配し、さらに10人になった相手から1つのゴールも奪えず、挙句の果てにPK戦負け…不満爆発はもっとも。激しく同意します。

同時にまた、3位決定戦はムダな大会だったとも思いますね。FIFAの会長も退屈そうに観戦してる姿がTV映像に何度か映されてたけど。

・ジェフ千葉の選手が多過ぎるんじゃないのか…

オシムのチームのベースが理解できているから、チームの土台づくりの時期だったから、ベースを全体に浸透させるなり体現させるのに効果的だから結果的に多く呼んでいたんでしょう。カメルーン戦ではまったく呼ばれなかったですよね。まぁ、他の選手を使ってみたいという意図も強かったでしょうけど。

今後、ジェフ千葉の選手たちがレベルアップして行かない限り、段々減っていくんじゃないですかね。

・このままオシムで行くのか…

私はベスト4がノルマと言ってました。だから、まず基本的にOKです。

それと内容が、アジアレベルでは “最も良いフットボール” と多方面からも対戦した他国からも認められているとおりで、それはその通りです。ですから、オシムでプロの監督の仕事をもう少し見たいです。監督交替は当然あってもよいが、チームづくりの最初のフェーズを終えたばかりで、まだ早計と考えます。

オシムはプロフェッショナルな監督です。ワールドカップまでの発展フェーズを立てて仕事をしていると思われます。カメルーン戦を観ても、次のフェーズに進もうとしていることを感じましたが。

・良いサッカーでも勝たなきゃ仕方ないじゃないか…

その通りです。でも、それはワールドカップ予選の時に使いたい言葉です。
ワールドカップ予選こそ、たとえ内容は悪くとも勝たなくてはならないのです。他の国も同じですよ。

で、本当は、勝つとともに、内容も素晴らしいものであって欲しい。私たちはそれを追求したいです。

アジアカップで優勝できなかったのは残念ですが、アジアカップを軽視するつもりもありませんが、アジアカップで優勝してもワールドカップに出られるわけではないので(コンフェデレーションズカップには出られますが)、そんなに落胆はしてません。3位決定戦の内容にはさすがに萎えますし、不愉快感を覚えましたが。

・イラクとサウジアラビアの決勝戦を見たが面白かった…

私も見ましたよ。お互いにアグレッシブな、いい試合でした。私は、イラクがグループリーグでオーストラリアに勝った試合も注目して見ていたので、イラクの優勝は意外ではありません。イラクと日本が対戦したら、いい試合になっていたでしょうね。サウジアラビアには、今大会で最もピークの時に当たってしまった感じがします。そういうのがまた、トーナメント(ノックアウト・ラウンド)に入ってからの “アヤ”でもあるわけで。

この試合でいちばん思ったのは、中盤の底(いわゆる「アンカー」)の選手のスケールや能力の重要さです。

アジアカップの日本チームでは鈴木啓太がここをやっていて、オシムは彼を重要視していますよね。もちろん彼なりによくやっていたし、相手の攻撃を寸断するプレーは元々評価の高い選手ですし、技術的にヘタクソと言われ続けながらも、パス回しによく絡んで、ボールも散らし、よくやっていたと思います。

でもね、国際的にはもっともっと、ここの選手のスケールが大きいんですよ。「アンカー」なんだから、最終ラインの前で相手を潰すのが第一の仕事。でも、ロングパスをビュンビュン通したり、前線からのこぼれ玉を、長い距離の豪快なシュートを放ったり、そんな能力も欲しい。

アジアカップでもあったでしょ…鈴木啓太のシュートチャンスが。ああいうのが訪れるんですよ、「アンカー」の選手には。それを決められる選手が欲しいなぁ。鈴木啓太のシュートは…いつも恥ずかしいレベルだよね。

私はここに今野を使わないのが不思議です。

今野は代表チームではサイドバックで使われることが多いけれども、本来は「アンカー」の位置が最も得意なはず。ボールを奪うスキルは高いし得点能力も高いです。以前から展開力に課題があると指摘されていますが、鈴木啓太と比較すれば別に遜色あるとは思えないけど(「遜色」という言葉を使うに相応しいレベルではないのがイタイけど)。

・オシムで大丈夫だろうか…

先にも述べましたが、オシムはステップを踏んで強化していっていますよ。アジアカップでも、試合の合間に合宿レベルのトレーニングを行っていたらしいし。オシムからしたら、アジアカップの期間もチームづくりの時間に使いたかったんでしょうね。

8月22日のカメルーン戦でも、オシムが次のステップに取り組もうとしていることが見て取れました。

ですから、もう少しお手並みを拝見させていただきましょうよ。

いえ、次のワールドカップまでは絶対オシムで、とは思ってないですよ。ワールドカップ予選の前や途中での監督交替もあるんじゃないですか、いや、あってイイんですよ。え? それまでアジアカップのような真剣勝負がないじゃないかって? ワールドカップ予選に匹敵する真剣勝負は、そもそもないですよ。それに、真剣勝負の舞台がなくても、代表監督を常に分析・評価して、方向性を定めていくのが協会(日本サッカー協会)の中に組織されている技術委員会などではないの? そこがちゃんと仕事ができれば(仕事すれば)監督交替は実行できるんじゃない。

今回はこの辺で。

U-22のオリンピック最終予選…久しぶりにヤバい雰囲気が味わえそうで、そういう意味では楽しみではあるね。
(2007/8/25)