アジアカップへの日本代表の臨み方について…考えてみよう

6月5日に埼玉スタジアムで行われた日本代表VSコロンビア代表の試合は、たいへん面白い試合だったと思うけど、どうだったでしょう。

いちばんビックリしたのは、コロンビア代表のマジぶりかな。

玉際の迫力や強さ、イーブンのボールに襲いかかるスピードとパワー…まるでワールドカップ並みとは言わないけれど、とにかく親善試合レベルではなかった。こういう相手はありがたいよね。

そういうありがたい相手にスコアレスのドローというのは残念だったけれども、こういう相手から2点くらいはもぎり取る底力がついてくればイイね。

この日の日本チームは、4バックに高原の1トップ。中盤は底に中村憲剛と鈴木啓太、その前に稲本、左右高い位置に中村俊輔と遠藤…という感じですか(4-2-3-1みたいな感じ?)。

稲本を使ってみてくれたのは良かったが、中盤底よりも1つ前に使った意図というのは何だろう。

最終ラインの前で潰し役をやるアンカーは鈴木啓太がいるけれども、稲本の守備についてはあまりオシムは買ってないのかな? それよりも稲本の攻撃力、特に中盤から前線へ飛び出していってゴールを狙うプレーに期待していたということか…2002年ワールドカップの時はまさにそれで日本を救う2ゴールをもたらしてくれたんだけどね。ただ、この日の稲本は、トルコのガラタサライでそういうプレーから離れていたためか、中途半端なプレーぶりでダメダメだった。前半で下げられたのも仕方ない出来。

左サイドバックでは、こちらもスイスのバーゼルでシーズンを通してコンスタントに活躍したらしい中田浩二を使ったのだが、こちらも前半で下げられて不完全燃焼のプレーだっただろう。右サイドは駒野が積極的に攻撃に絡んで行ったこともあって、コロンビアに左サイドをかなり突かれて守備に追われてた印象がある。

あと、4バックのセンターは中澤と阿部が務めていたのだが、阿部はセンターバックではどうかなぁ。よく踏ん張ってはいたけどね。

で、攻撃のほうだ。1トップというのは難しいんです。

2列目の選手がどんどん絡んでいかないと、1トップの選手がいかにも苦しい。シュートも打てないし、チームとして攻撃の形にならない。1トップに入ったこの日の高原は、それでもよくやっていたと思う。課題は2列目の前目で起用された中村俊輔と遠藤だろう。

もっともっと1トップに絡んでいって、相手ゴール前に入っていかないと…中盤のセンターで“いつもようにゲームメイク”しようとするような風情では、攻撃にならんでしょう。

後半頭から羽生が入って、どんどん相手ゴールに前に果敢に飛び出して行くことによって、ようやく攻撃が活性化したしイマジネーションの発揮が感じられるようになった。そういうことです。

しかし、羽生…コロンビアの選手に跳ね飛ばされまくっていたね。

一度は自分から当たりに行ったのに逆に跳ね飛ばされ返されていたし。そういう肉弾戦でない戦い方をしないとね。“本番”では1試合だけじゃなくて、グループリーグ戦など何試合も戦わなくてはならないのだから、肉弾戦で1試合で著しく消耗していては戦い抜けないわけで。

ところで、よく「誰々のチームになってきた」という言い方をします。それって日本のレベルの低い(進歩のない)旧来メディアに言わせると、「監督が指名」とかそういうことになるんだろうけど、全然そういう意味じゃない。観ている我々が実質「誰々のチーム」だと読み取る(読み取れる)ことを意味しているわけ。例えば、Jリーグのチームの例を1つ挙げると、アルビレックス新潟に今シーズン、マルシオ・リシャルデスという選手が新たに加わったけど、開幕から1か月くらいで「今シーズンのアルビはマルシオ・リシャルデスのチームになってきているね」という会話が私の周辺では交わされていた…そういうことです。

で、そういう言い方をするならば、現段階での日本代表チーム…なんか中村憲剛のチームという感じがする。もちろん、決めなきゃいけないシュートもあったけどね。オシムがどう扱ってんのか、どう指示なりしてんのかは知らんよ。観ていて読み取れる(見て取れる)印象なり解釈だから。

さて、フル代表が臨むアジアカップが来月開幕する(アジアカップ開催中はまたJリーグは1か月以上も中断だ。こういうのって、あまり喜ばしいことではないなぁ。通年のリーグ戦なんだからね)。

2000年と2004年に2連覇しているのだから今大会も優勝がノルマだ…とか、アジアで圧倒的な内容で優勝するくらいじゃなきゃぁ…とか、いろいろ意見があるようですが、私は優勝がノルマとは思いません。

アジアカップで優勝しようがどうなろうが、肝心なのはワールドカップ予選でありワールドカップ本大会なのであって。過去も、アジアカップで手の内をさらけ出してしまって研究されて、最も重要なワールドカップ予選で苦労した経験を我々は何度もしている。実際、他のライバル国が勝負をかけてくるのはワールドカップ予選であり、アジアカップはその前の腕試しというか偵察の意味が強かろう。

だからといって手抜きでよいとは言わない、言ってない。アジアカップは現段階のチームづくりを試す機会であり、選手たちも無理のない召集をかけられる選手構成で臨むので良いと考えている。それが選手層の底上げになるのだ。大体において、日本代表もしくは日本サッカー協会は選手層の底上げがヘタクソだ。

そういう意味では、中村俊輔や高原を招集しようという動きがあるようだが、私は反対だ(ドイツのフランクフルトに移籍した稲本はクラブチームに専念させようと考えているようだが、それはナイス。話がそれるが、稲本のドイツ・ブンデスリーガ移籍はGood!じゃなかろうか。ブンデスリーガのレベルが云々とかいう話ではなくて、リーグの特徴というかタイプとして活躍が期待できるよ)。

中村俊輔や高原だって、所属クラブチームで新しいシーズンが始まる前の重要な時期だ。そちらに専念させてあげて、所属チームでの活躍の土台を作ってもらったらどうなのだろうか。

じゃあ、海外でプレーする選手たち抜きで臨めというのか? ということになるね。Yes! そうです。

で、もちろんアジアカップの戦績がどうでもよいわけがない。優勝なりすれば、それはそれで素晴らしいことだ。むしろ優勝云々よりも、しょうもない相手に負けてもらっては困る。2004年の時も、優勝はしたけれど、ヨルダンとかバーレーンに負けそうになって、「おいおい、****なんかに負けるのかよ〜」とぼやいていたものだ(結局はPK戦で次のステージへ進んだり、延長で勝ったりしたのだが)。それはイカンよ。手の内をさらけ出す以上に逆にもっと弱点をさらけ出してしまったり、相手に自信をつけさせちゃイカン。

それでもって、じゃどれくらいの目標を設定しているんだ? ということになるでしょうが、ぶっちゃけベスト4がノルマでしょう。ベスト4がキープできれば、ワールドカップ予選も一応セイフティゾーンではあるわけで。
そういう視点も持って欲しいね。

Jリーグだが、ガンバ大阪が独走状態だけれども、まだまだ先は長いのでわからない。J2はもっとわからない。何しろJ2は44試合も戦わなければならないのだ。

ただ、ガンバ大阪だが、一段チームとしての熟成がアップしたということは言えそうだ。

昨年までの凄まじい攻撃力というのは少し静まったかもしれないけれど、チーム全体としての「スイッチ・オン」というのができるようになってきた。

これって、海外の強豪チームにはよくある“自然的機能”なのだが、日本のチームにはこれまでなかなか見られなかったところ。荒削りな面白さは減ったかもしれないけれど、その分、そうした「行くときは行く」「行くときが共通感覚としてわかりあえる」、そして「行ったときは試合を決められる」というのが見られるようになってきたと思うのだが。

ただね、そういうのではアジアは勝ち抜けなかったりすんだよね。

ナショナルチーム(日本代表)でも同様。チームの熟成やクオリティやクラスが高くても、アジアで勝てることは別。それだけアジアの戦いは極めて特殊ということ。アジアで(アジアカップごときで)圧倒的に優勝できないでワールドカップで勝てるか…みたいなことを言う人も少なくないのだけど、そうは行かないのです。

アジアの戦いはアジアの戦いなわけ。
アジアの戦いと世界の舞台の戦いはまったく別物。


それはよくわかっておこう。それでも、アジアの戦いを勝ち抜かないと世界の舞台へ出られないわけで…だから厄介なわけ…アジアの戦いは。

ところで、北京オリンピックのアジア最終予選のグループ分けが決まったし、浦和レッズと川崎フロンターレが挑むアジアチャンピオンズリーグのドローも決まった。

アジアカップは別として、ワールドカップ予選もそうなのだが、これらはホーム&アウェイで戦われる。アジアの戦いはようやくすべてがホーム&アウェイで開催されるようになって(以前はセントラル方式=1箇所集中開催が多く、フェアではなかった)、それがようやく国際標準になってよいことなのだろうが、今度は逆に、移動距離が凄まじすぎて、選手たちの酷使が心配だ。

日本からサウジアラビアとかイランを往復すれば地球1周だからね。それがナショナルチームの試合もあり、クラブチームの試合もあり、毎週国内リーグの試合もあり…これじゃあ、選手たちが壊れる。すべてがホーム&アウェイになってきた中では、やはりアジアサッカー連盟(AFC)は東西に広すぎて、そろそろ分けないといけなくないか?

おっと、6月30日にカナダでU-20ワールドカップが開幕します。これまた楽しみ。U-20日本代表は正直厳しいグループに入ったが、なんとかグループリーグを突破して欲しい。また気が気でない毎日が始まる。
(2007/6/17)