オシムのフル代表(A代表)の試合は興味深いゾ!

オシムがフル代表(A代表)の監督になってから、やれ一般に知られてない選手ばかり起用するだの、やれ小粒な選手ばかり選ばれているだの、やれ代表人気が下がっただの、いろいろ突っ込んでくる人が少なくないようですが、

あんまり旧来メディアの煽りに乗っからないようにしましょうよ。

一般に知られていない選手っていったって、フットボールは世界と戦うために常にレベルアップし続けていかなくてはならないものだから、他の閉じられた競技と違って顔見世興行なんか必要ないわけ

顔見世興行してたら、底上げもない(それはひいては本当の力がついて行かない)わけで、そういうナショナルチームを何年も見続けさせられてきたわけでしょ。

その結果が、昨年のワールドカップの惨敗だったわけで。

小粒な選手たって、それだけJリーグの選手の国際水準でのレベルは上がってきているのだから、使ってみたい選手が増えているわけでしょうが。Jリーグの試合観てれば、「この選手、ナショナルチームで見てみたいなぁ」って選手が何人も出てくるはずですよ、あなたも、あなたも…ね。喜ばしいことじゃないですか、それだけ選手が豊富で。私は嬉しいし、楽しいね。

そして、まずは海外でプレーする選手を呼ばないで国内(Jリーグ)でプレーする選手だけでチームの土台づくりに着手していくなんて、プロフェッショナルな監督として当然のことだよ。おかげで、海外クラブチームに所属する選手たちも、試合のたびにはるばる長距離移動することによるリスクを回避することができ、所属チームでのポジション争いやコンディショニングに傾注することができた。非常に落ち着いた思慮深いマネジメントだ(ま、プロの監督としては当然のことだと思うが。それができない「監督」もいたわけで)。

代表人気? ああ、確かに6月1日のモンテネグロ戦はフル代表の試合としては随分久しぶりに3万人を切りましたね。

でもね、なんで週末金曜日に静岡スタジアムで開催するの?

これはマッチメイクの誤りでしょ。静岡県の人たちだってキックオフまでに行けないよ、静岡スタジアムってどこにあると思うのよ。

地上波TVの視聴率にしてみても、今年3月21日のペルー戦(この試合は横浜国際に6万人も動員したけど?)の視聴率が、裏のフィギュア世界選手権と亀田のボクシングに負けたとか、旧来メディアが「それ見たか」のごとく突っ込んでくるけど、3月の代表の試合は例年あんな数字ですよ、というくらいで、そんなことに触れもせずに何にも知らない大衆に刷り込みや誘導行為をするのは反則だな〜 >オジさん対象の旧来メディア

6月1日の試合も同じくらいの視聴率だったわけで、TVでプッシュしまくりの特定競技と違ってこれだけ普段は冷ややかにしか扱われてないのに、別に「危機的状況」でもないんじゃないの。そんなんだったら、旧来メディアで連日プッシュしまくりでも2ケタ行くか行かないかという特定競技はどうなるのよ。

ま、とにかく代表人気ネガティブキャンペーンなんかに煽られずに、我がナショナルチームの進化や熟成を見つめて行こうじゃないの。

フル代表の試合は、昨年11月15日のサウジアラビア戦(アジアカップ予選グループリーグ最終戦@札幌ドーム)で、一つの形を見せるまでに到達した。この試合は、美しいゴールも見せてくれた非常に興味深い内容だった。

そして、3月21日のペルー戦では、中村俊輔と高原の2人を召集し、いよいよ国内でプレーする選手たちによって構築した土台の上に、海外でプレーする選手たちの力をオンするフェーズに入ってきたことを我々に明示してくれている。そう、海外でプレーする選手たちは、ナショナルチームにとってプラスαの要素となるものであるべきなのだ。そうなってこそ、地力ある、層の厚いナショナルチームが現実のものとなる。

このペルー戦では、中村俊輔が2アシストと賞賛されていたけれど、どちらもセットプレーだったし、あんまり賞賛というほどではなかったなぁ。もちろん、中村俊輔のプレイスキックは非常に大きな武器だ。でも、それくらいしか中村俊輔自身には見せ場はなかったしね。試合終盤に家長や水野といったU-22の選手たちが入ってから、攻撃がイマジネーション豊富でクリエイティブになった気がしたことが、それを物語っているように感じた。

(※オシムはそれを「エスプリ」と表現→http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/kaiken/200703/at00012694.html

オシムは、攻撃におけるウイング的な選手(ワイドに開く選手)の必要性を重要視しているように感じている。それも私好みではある。

6月1日のモンテネグロ戦は、海外からは高原のみが出場したわけだが、前半は非常にイマジネーション豊富なパフォーマンスだったと思う。

この試合では最終ラインは4バックだったのだが、やはり4バックのほうが安定するんじゃないかな。

もちろん、4バックか3バックかというのは重要な要素ではない。ただ、日本の場合は3バックだと、3バックの外側が大きな弱点になるのでね(国際的には、ナショナルチームでもクラブチームでも3バックでもそんな風にはならないんだけどね。日本のディフェンダーの問題かな? それと日本のディフェンスラインの(遅れた?)感覚のためかな?)。それをカバーするために左右のウイングバックが下がりすぎて、実質5バックになったり、それだと日本の長所である中盤の構成力が失われて攻撃力も半減するという欠陥がある。

ただね、4バックの場合は、中盤もしくは中盤より前に、ワイドに開く選手が必要。

そうでなければ、4バックの左右両サイドバックが攻撃におけるウイングプレーを担わなければならず、それは逆に守備面で欠陥が出てしまう(いっつも「サイドアタック」の必要性を解説者なる人たちが口にしているけど、彼らは実際にどうすればサイドアタックが可能になるかについての言及が欠如している)。

先に、オシムは「私好みのウイング的な選手の必要性を重要視しているような気がする」というのは、この辺からも理にかなっているわけです。しかも、サイドにへばりついたウイングプレイヤーを求めているのではなくて、流動的な動き、連動性、柔軟性から、常にサイドのスペースを積極的に使い、そこを起点として攻撃の形を作ったりフィニッシュに持ち込んだりするということ。

あと、モンテネグロ戦では右サイドバックの駒野のクロスの迫力に驚いていた向きが少なくないようだが、駒野はキックの精度や威力が特長だからね。今回は加地がケガだったのでスタメンを張っていたのかもしれないけれど、加地よりもその辺は上だろう。いや、もしかすると加地がコンディション良くても駒野かもしれないぞ。昨年のワールドカップでは場数不足で力を発揮できなかったけれども、サンフレッチェ広島でのプレーを観てれば駒野のポテンシャルは多くの人は知っていること。あとは運動量や献身的な守備が課題のような気がするが、段々進歩していると思うぞ。

6月5日はコロンビアとの対戦がありますが、結構楽しみ。

コロンビアは南米の強豪らしく、守備が非常に堅いし、選手全員に共通のスキルとリズムがあり、非常にソツがないというか、巧みで、ある意味いやらしい試合運びをする。これは、3月に対戦したペルーにも共通していること。

そういう相手との試合を数多くこなそうよ。そういう相手をコンスタントに打破できれば、ホンモノの底力が備わっていくんじゃないか。

ただ、それ以外、日本サッカー協会のマッチメイクはブー(NG)だな。金曜日の静岡スタジアムでの開催といい、対戦相手の交渉といい。もっちょっとしっかりやってくれ。代表人気が下がってきた(?)云々のオジさん対象メディアの話に乗ってないで、年間予算170億円もの"大企業"らしい、プロフェッショナルなパフォーマンスをやってくれ。プロフェッショナル度を監督と選手だけに求めるな。

ところで、5月23日に行われたヨーロッパ・チャンピオンズリーグのファイナル。ミランもリバプールも、どっちもファイナルらしく(?)硬かったね。

試合を決めた2点ともピッポ(フィリッポ・インザーギ)のゴールだったが、2点めのカカのスルーパスに反応して抜け出て、ゴールキーパーを交わしてゴールに流し込んだプレーはさすがにワールドクラスだった。

あのシーン、リバプールのディフェンスラインは4人揃っており、その前にももう1人いたわけです。カカのスルーパスはもちろん素晴らしかったけど、私はその前のカカにボールを渡したアンブロジーニの一瞬の間の取り方におぉ〜と来たね。おぉ〜と言った瞬間、カカにボールが渡ったのでした。あの時、アンブロジーニはハーフウエイラインを越えたあたりでボールをキープし、左サイドへ向かってドリブリングしたわけ。その向こうには(左サイドには)味方選手がいて、誰から見てもそっちへパス出しするだろうという雰囲気だったわけです。

ところが、突然ドリブリングの方向転換をし、弧を描くようにターン…その瞬間、リバプールの選手たちにアレッ? っていう雰囲気がしなかった? …そこですかさずカカにパスを出し、カカは一瞬のエアポケット状態のリバプール守備陣の中でフリーで、しかも余裕をもって前を向けた…というわけです。

いぶし銀のアンブロジーニの何気ないプレーだったと思う。
(2007/6/4)