今、ヨーロッパでプレーする日本人選手たち…
リーグの「格」は関係ない! プレーすることが最重要なのだ!!

ヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグでは、中村俊輔が所属するスコットランドのセルティックは、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドや、ポルトガルのベンフィカ・リスボンと同組になったグループステージを勝ち抜いたものの、トーナメントでイタリアのACミランに延長戦の末に敗退しました。

ミランとの試合は、ホーム/アウェイとも90分ではスコアレスだったのだけど、内容的に差は大きかった。ただまぁ、グループリーグを突破したことは素直に評価しようじゃないの。

中村俊輔自身は、マンチェスター・ユナイテッド戦で決めた2本のフリーキック、これは凄かった。

特に2戦めのホームでの一戦のフリーキックは、Youtubeでも世界各地から何本もアップされているように、国際的に"fantastic!"と賞賛されるもの(各国語の実況が入っているムービーを見比べると、これまた実に面白い…)。

あの一戦、セルティックは中村俊輔の一発でマンチェスター・ユナイテッドに1-0で勝ってしまったのだが、でも"Man Of The Match"は終了間際にPKを止めたゴールキーパーのボルツだ、客観的に言って。ヨーロッパのメディアもそんな評価だったようだし。中村俊輔のFKは確かにフィルムライブラリーに残されるほど素晴らしかったが、それ以外には効果的なプレーがなかったしね。

それはミラン戦でも同様で、率直に言って、スペースを消されたり左足を充分警戒されると、ほとんど何もできなかった。ミランなどのクラスのチームと対戦すると、周囲のサポートも(防戦に追われて)薄くなるし、そのような状況の中では生きづらい。タイプとしてね。

スコットランド・プレミアリーグでも、中村俊輔は今シーズン、ペナルティエリアに果敢に飛び込んで行ってゴールを狙う意識を強く持つようにしていることをインタビューなどで語っていたが、それはタイヘン結構。

ただ正直言うと、もっと早くから、何年もずっと前からやってくれてたらよかったんだけどな(日本人のファンタジスタ系にはありがちな傾向だが)。

ま、そんなところではあるのだが、今からでも遅くはないから(年齢的にちょっと遅いか?)、止まったボールの時だけが見せ場じゃなく、華麗なアシスト狙いだけじゃなく、一人でも相手ゴールをこじ開ける「怖い選手」へと少しでも変貌していって欲しいものだ。

近年、日本人選手はどうしてヨーロッパ三大リーグで活躍できないか?…などという嫌味(?)をばら撒く人たちがいたりするが(「ヨーロッパ三大リーグ」って、イングランドのプレミアリーグと、イタリアのセリエAと、スペインのリーガ・エスパニューラを指してるんでしょうね。きっと)、確かにそれらよりもリーグ自体の「格」なり「ランク」は落ちるかもしれないが、その他の国のリーグで活躍すること自体を否定するような主旨はいかがなものだろう。

“三大リーグ”のクラブに所属していたって、試合に出なければ仕方がない。それに、“三大リーグ”以外の各国リーグだって世界各地から優秀な選手たちが集結していて、その中での戦いはタイヘンなものだ。その中でスタメンが張れてこそ、大きな意味があるというものだろう。その意味で、中村俊輔にせよ、ドイツのフランクフルトの高原にせよ、フランスのルマンの松井にせよ、スイスのバーゼルの中田浩二にせよ、オーストリアのレッドブルの三都主にせよ、イイんじゃないか。

外からゴチャゴチャ言うのは容易いことだ。だが、チームの主力メンバーとしてコンスタントに試合に出場し、そこで結果も評価も残していくという営みを積み重ねることが重要。いくら(ヨーロッパの)“二流リーグ”だの“弱小リーグだの”と批判しようが、そこで優勝なり厳しい残留争いを生き残って、国際レベルでの「勝者のメンタリティ」を体感し自らに浸透していくことが何より重要。それが「歴史」や「DNA」になる。そういう視点や感覚を持ちたいね。

ところで、イタリアのカターニャに移籍した(現在はまだ東京ヴェルディからのレンタル移籍だが)森本が、ちょっと前(今年1月)になるが、18歳にしてセリエA初出場で初ゴールを叩き込んだ。しかも、アウェイでドローに持ち込む終了間際の同点ゴールだ。

アーリークロスにいいタイミングでゴール前に入り込んでイイ感じでトラップ、ゴールへ向かってドリブリング、そこでディフェンダーが強いチャージを仕掛けてきたにもかかわらず、バランスを崩されずにガシッと持ちこたえ、その次の瞬間に豪快に叩き込んだというファインゴールだった。あれ、普通なら弾き飛ばされるか、バランスを崩されているだろうにね。

あの森本のプレーを見た瞬間、「体幹が強いな」と感じた。

中田英寿がまさにそうだったんだけど。昨年末に中田英寿のプロになったばかりの頃のプレーをCS放送で見たり、U-20日本代表でのプレーを見返しても、そう。フィジカルが見るからに強いというほどではないけれども、「体幹」が強い、という感じだ。

こういう「体幹」の強さというのは、年齢とは必ずしも一致しないんだね。

日本人はフィジカルが弱いと言われる。昨年のワールドカップでも、日本人のフィジカルの弱さを感じた人が多いと思われるが、本当にそうなのだろうか? 数値的には、日本人にも国際的に優れているフィジカル的特長もあると聞く。

では、どういう部分が弱いのだろうか。また、フィジカルの強さなるものはトレーニングによって強化することはできないのだろうか?

あ、そう言えば、ワールドカップで日本がグループリーグで敗退した直後、地上波民放TVで、いわゆるコメンテーターなどと称するヤツが(日本代表は)「重量級に立ち向かって歯が立たない軽量級の悲哀を感じて哀れになった…」みたいなことを言っていたが、許せん発言だ!!
フットボールは無差別級の戦い(闘い)であり格闘技であり、人類最激戦競技なのだ。

競争性が低く、自国のイイところだけしか楽しめない島国根性(←ちょっと表現が古い!?)マル出しの人間に、そういう無礼な物言いをしてもらいたくないね。

話を戻そう…フィジカルと言えば、これは国際的な傾向かもしれないが、近年ケガが多いような気がする。特に膝の靭帯系が。日本人選手は、Jリーグの試合でも、練習や練習試合も含めて靭帯系のケガが結構多いように思われる。

先のカターニャの森本も、練習中に膝の靭帯をやってしまって今シーズンは早々に終わってしまったようだ。こういうのは、フィジカルトレーニングで何とか防げないものなのだろうか。

というわけで、ここ数年、私は日本人選手のフィジカルの問題に着目しております。とはいえ、私は専門家ではないので、大学教授への突撃(?)インタビューを敢行して、日本人選手とフィジカルの問題に鋭く! かつ独創的に! チャレンジしてみたいと思っております。そのために、サッカーのキャリアも豊富な最適任者のご登場を用意しておりますので、ご期待下さい。

ところで…今回、中田英寿のことにチョコッと触れたので、彼が突然の引退をしてからずっと思っていることを。

正直、とても残念だ。いや、中田英寿のプレーが観られなくなることを、ではない。プロフェッショナルなサッカー選手の幕の引き方として。

最後に1年でも自分の故郷なりキャリア・スタートのチームに戻って、あるいは日本のどのチームでもいい、我々に培ってきたモノを見せて欲しかった。日本のフットボールに還元もして欲しかった。それが由緒正しい「国際的プレーヤー」としての終わり方であり、声援を送ってきてくれたファンや育ててくれた日本サッカー界への恩返しではないのだろうか。

ヴァンフォーレ甲府でもいいし、湘南ベルマーレでもいい。我々は、そのプレーが眼前で観られるなら、毎試合でも喜んで足を運んだだろう。

今回はこれでオシマイ。(2007/3/21)