人間、誰も一足飛びに成長することはできません。未熟だったからこその失敗、後悔…そんなことで、忘れられない人って、いませんか?
RYONには、どうしても忘れられない人がいます。もう1年以上も経つのに、その人のことは鮮明に思い出され、たくさんの後悔に胸が苦しくなるのです。
どうしてRYONはあの頃、もっと一生懸命生きなかったんだろう。彼はあんなにRYONに尽くしてくれたのに……。RYONが自堕落な、いいかげんな生活をしていたために、RYONは彼とすれ違ってしまった。……そして、もう二度と会えないかと思うと、自分を大切にしなかったRYONの愚かさを呪い、後悔でいっぱいになる。彼は今、どうしているんだろう。どこにいるんだろう。せめてひとめ会いたい…。
あれは、去年の夏のことだった。RYONはまだ安いアパートに住んでいて、近所のスーパーでRYONは日用品や食材を買っていた。彼は、そこのレジ係だった。「いらっしゃいませ」とぺこりとお辞儀をし、一生懸命レジを打ち、「ありがとうございました」とまた頭を下げる姿には、労働に汗を流す美しさがあった。
そのうちRYONは、そのスーパーへ行くと、必ず彼のところで会計をするようになり、彼は、小銭がこぼれないように両手を添えて、RYONにお釣を渡してくれるようになった。仕事中はまったく私語をしない彼。軽口を叩いてはしゃぐ普段とのギャップを考えると、おかしくももどかしくも感じたものだ。
その頃RYONは、生活することにとても疲れていて、その上小さな台所で自炊をする気がまったく起こらず、毎日、食事はコンビニやほかほか弁当で済ませていた。何に夢中になることもなく、ただ時間が過ぎていった。
そして、夏が終わった。暑い間まったく自炊をしなかったため、買い物の必要がなく、何か月ぶりかにスーパーへ行った。
……レジに彼の姿はなかった。
その後何度、そのスーパーへ行っても、彼はいなかった。夏休みだけの、短期のバイトだったらしい。肌が絹のようにきめこまかくて、つぶらな瞳、さらさらの髪に細身の高校生だった彼。きっとお友達とは楽しくはしゃぐ、みずみずしい生活を送っているのだろう。
……名前も知らないその彼には、もう二度と会うことはなかった。
……なぜ、RYONはあの時、せっせと自炊をしなかったのか……。
もっときちんと生活をしていたら、もっとスーパーに通っていただろうに…。わざわざ彼のレジに並び、お釣を手渡してもらいたくて、お札でしか支払わなかった、あの至福のひとときは、もうやってこないのだ。
そのうち彼は、芸能人にでもなってしまうかもしれない。有名人になる前に唾つける(なんか、唾つけるって生々しいなあ)チャンスを、RYONは永遠に失ったのだ。
小さな後悔を胸に、彼はRYONにとって忘れられない人となった。くっそ〜! ほんとに可愛い顔してたんだぞ。
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