コウイチくんが、RYONの部屋に遊びに来ることになった。
コウイチくんはジャニーズ顔だ。コウイチくんは細身だ。コウイチくんはしっかり者だ。コウイチくんは背が高い。コウイチくんは年下だ。

……。……これは……。

適当にご飯を済ませて、二人はがっちり掃除したRYONの部屋に戻ってきた。ナパ・バレーの美味しいワインをど〜んと出し、ガプガプとついだ。……そぅら、飲め……。もっと飲め……!

程よくワインが体の中を巡り、眠たくなってきたので御布団を敷いて、ゴロゴロしながら話をしているうちに、なぜか「ツボ」の話になった。
足にはたくさんのツボがあって、膝から下は内側、モモは外側にツボが沢山あるのだそうだ。そこら辺を適当に押して、痛いところをぐりぐりしていると、知らないうちに、悪いところが治るのだそうだ。ツボは、悪いところしか痛まないらしい。

「手にもいろいろツボがあるらしいよ。」
コウイチくんは、RYONの親指と人差し指の付け根の間をぐりぐりと押した。

「……あ!」
RYONは叫んだ。……いってえ〜!
すごい痛い。すごい痛いぞ!! イタ気持ちいいとも言えるが、人にやってもらうと、加減がわからないので、痛い。……くくぅ……!

……が、ふとRYONは思い出した。
女の子の手を触りたいがために、手相占いをするおやじの話を……。
……まあ……コウイチくんたら……。

そしてその夜、コウイチくんは、RYONを一睡もさせてくれなかった。

コウイチくんが押してくれたのは、便秘のツボだったのだ。……腸が動いて動いて、痛くて寝られないのである。
腸が動いてるんだからトイレに行けばいいのだが、そこまで具体的な痛みではないのだ。お客さんがいる時って、なかなかおトイレに行きにくいものだが、そういう乙女っぽい気持ちと、ツボを押されて素直に条件反射した腸とが、葛藤をしているらしい。

……横でコウイチくんは、スヤスヤと寝息を立てている。
……こうなってみると、なんだか身の危険を感じたコウイチくんの防御策だったような気さえしてくる。
……いてててて。

翌朝、安心しきってぐっすり眠ったコウイチくんは、「じゃ!」と言って颯爽と帰っていった。

……こうして、きれいに掃除した部屋にかかった魚をみすみす逃し、RYONはひとり、自力でツボを押してみたりしている。