大変なことになった。
長年片思いの男の子、東谷くんとデートすることになったのだ。
今回のRYONの美容作戦は、レモン風呂である。
以前、小学館の雑誌『Domani』で特集されていたケミカルピーリング、興味ガモガモなんだが、なにせ無添加推進女だし、貧乏人だし、いまいち手を出す勇気がない。が、ちらりと「レモンパックはフルーツ酸入り、元祖ピーリング」ってな記事を読み、そうかと冷蔵庫からレモンを取りだし、輪切りにして風呂桶につけてみたのだ。
まあ風呂全体がレモンのいい香りになるのは単なる下地。お湯に使ってる間、輪切りを顔に貼ってみた。
……これが、結構イタい。いててていてててとピリピリしみるのを我慢して風呂から出てみると……。
すごい。頬がつるつる、光を反射して輝いている。文字通り「一皮むけた」って感じである。愛用の化粧水をたたき込んだあとは、肌はぷにゅぷにゅに変わり透明感も出て、すっぴんなのに化粧をしているかのようである。
農家の皆さまもRYONのデートを応援してくださっているようで、今は国産レモンの出荷時期らしい。やはり顔に直接つけるものだから、農薬バリバリの輸入品は怖い。「一山100円」の安いピーリング剤をたらふく買い込み、毎日風呂場で天然ピーリングを行っている。
やはり、長年培われてきた美容法って信用できるな、やはり自然が一番などと、また新たに洗脳されつつ……。だってさ、これひとつでビタミンCとフルーツ酸が入ってるんだよ。それが一回15円くらい。なんてお得なの??
さて今回は美容法はそこそこに、前デートの失敗を胸に、年上の女の手練手管を入手するために、恋のお師匠、マキちゃんに講義を受けることにした。
「女は『私、遊んでるの』みたいなことを言っちゃダメよ。好きならちゃんと好きだって意志表示しないと。『俺に気がないんだな』って誤解されたら、つまらないでしょ? で、男が『俺は遊んでる』みたいなことを言っても、鵜呑みにしちゃダメ。そんなの、どこまでが本当かわからないんだから。見栄って場合も多いんだし。本当に遊んでる男はそんなことを言わないものよ。言わないで得をすることはあっても、言って得することなんかないんだから」
……なるほど。損得で考えたらそりゃそうだ。
じゃあ実際、デートの時はどうしたらいいのか、聞いてみた。
マキちゃんは即答した。
「むだ毛は剃っていくようにね」
……。
……何か、それよりも大切なことがほかにあると思うのだが……。
いや、そもそも「年上の女の手練手管」を聞くはずだったのだが、そんなことでいいのか……?
それが「手練手管」なのか……?
いや、そもそも大抵のファースト・デートでは口も利けないRYONである。そんな仕込みをしても無駄に終わりそうだ、それ以前に何か必要なことがあると思う、と言ったら、
「歯を磨いていくようにね」
……。
こういうことは、結局は他人に頼るな、ということなのね。自力でがんばるわ。
|