とある仕事の打ち合わせで、とあるクライアントに会った。やって来たのは、リュウイチさま(いちおうクライアントなので丁寧に)という新卒の新入社員の男の子であった。
……ここの会社の方々はRYONのコラムを逐一読んでいたらしく、どうやらRYONの動向をみっちり把握しているらしい。リュウイチさまは、LUNA SEAの河村隆一に似た、好青年であった。もともと全然河村隆一は好きなタイプじゃないが、一般社会にあれがいたら御の字である。……まるで代議士の接待で吉原にでも来たかのようだ……。RYONも出世したものだ。はっはっは。ちこうよれ。
さて、その仕事の打ち合わせというのは、RYONが新たに仕事がもらえるかどうかの瀬戸際、しかもそこでRYONの全能力を発揮しなければいけないという正念場であった。インチキ代議士のRYONは貫禄のかけらもなく、もうすぐ「佐藤のご飯です」になるんじゃないかくらいひっくり返った声で営業をした。
そんなRYONを後目に、リュウイチさまはほがらかに話を聞き、ポイントポイントをきちっと押さえた反応が返ってくる。RYONはますますハイテンションになって、なんだかもうオペラ歌手みたいである。RYONは自分が全然落ち着きがないので、寡黙なタイプというのにも結構ヨワいのだ。
大学の講義でも、マイク使っててもなに言ってんだか聞こえない助教授とか、イントネーションが真っ平らで、渋いおじさまなのにものすごくテニスの上手なコーチとか、犬のようにワンワン慕って授業を受けている。
……若いくせに、なんだリュウイチさまよ。できあがってるじゃねーか。RYONは打ち合わせのあと、リュウイチさまに話しかけた。
「河村隆一に似てるって言われませんか?」
リュウイチさまはお答えになった。
「河村隆一はないです。よく言われるのはコロッケとか……」
コロッケ??
……。
コロッケ……。
……。
……コロッケ……。
コロッケ。そういわれるともう、コロッケにしか見えないのはどうしてだろう。やっぱり一般人の容姿はなるべく身近なレベルに引き落としたいという負けず嫌いな感情が交じるんだろうか。
さて、その後コロッケさまと打ち合わせがあったが、もはやRYONの声はオペラ歌手にはならず、せいぜい森高千里である。ミーハーな面白みをなくした反面、心のゆとりを取り戻したRYONであった。
コロッケ……もキライじゃないけど……。
やっぱり、それとこれとはわけが違うさ。
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