RYONの入ってる大学テニスサークルの飲み会に行った。
OB会だったので、年下から年上まで縦横無尽な男の子たちが集まるその飲み会で、RYONは当然若者たちのグループに混ざり、飲みゲームをやっていた。
その中に年齢20歳、本人曰くラルク・アン・シエルのヴォーカル、Hydeに似ているという男の子がいた(なんだかHydeモドキがよく出てくるな、このコラムは)。RYONからしたらHydeにしちゃあデカすぎるので、これはTOKIOだなとか思ってたんだが、そんなのは一般人の彼にとっては瑣末な違いである。要はジャニーズ顔なのだ。
さて、このような飲み会で必ず行われる、「山の手線ゲーム」を筆頭とした、飲みゲームには欠点がある。間違えた人間ほど飲まされ、飲まされれば飲まされるほど酔っぱらって、また間違えるというシステムなのだ。飲んだバカ騒ぎが大好きなRYONは、このテのゲームは結構うまい。こういうのは経験値がものを言うのだ。が、時とともに移ろうのもまた飲みゲームというものらしい。
「ピンポンパンゲーム」というのがある。「ピン」とひとりが叫んだら、隣の人が「ポン」と叫んだあと、「パン」の人は、叫びながら輪の中の誰かを指す。すると指された人からまた「ピン」、隣の人が「パン」……と続けていく。
……このゲーム、RYONの知らない間に進化していた。「ひとつ飛ばしふたつ飛ばしピンポンパンゲーム」などという名前になってるのだ。「ピン」と「ポン」のあいだはひとり飛ばし、「パン」はふたり飛ばした人が順番になるのだ。
そしてもうひとつ、RYONの知らないゲームが誕生していた。「セブンゲーム」というものだ。順番にひとりずつ数を数えていくのだが、7の倍数と7のつく数字の時は数を唱えず手を叩く。
……このふたつのゲームでRYONは、その日の飲み代を充分まかなうほど飲んだくれた。「ひとつ飛ばしふたつ飛ばし」に頭がついてゆかず、もともと算数の弱い頭に酒が入り、「24」というまったく7に関係ない数字の時に手を叩いた。
飲み会後半は椅子に横たわり、意識ももうろうとぶっ潰れていた。
会もお開きになり、クタクタと寝ているRYONのところに誰かがやってきた。
「RYONさん、もう帰りますよ、起きて下さい」
返事をしないRYONに、その誰かはRYONを抱え起こした。
……あ、ちょっと待った、今動かさないで……!
げ〜っと酒を出したあと、ふと見てみると、介抱してくれているのはHydeだった。……げ。それでも彼は心配そうにRYONの世話をしてくれている。相変わらず地平線のわからない状態のRYONであったが、なんかのために念入りに口をゆすいでおいた。
さて、飲み会の場所は道玄坂。
よくゲロゲロになった女の子を抱えて、下心満々な男どもが駅と反対方向へ坂を上がっていく、あの道玄坂である。そしてRYONは歩けない。……Hydeよ、君なら許す、どこへでも連れて行き給え。
そこへ、大変実直なRYONの同期がやってきた。
「大丈夫かお前? 珍しいな潰れるなんて」
大丈夫です、チャンスですから放っておいてください。
「ほら、これ飲んでアルコール飛ばして」
緑茶の缶をくれた。ありがとう。もう君はいいから。
「もう君はいいから」
……え?
「あとは俺が責任持ってこいつを家まで送るから、終電もやばいし帰っていいよ」
……ちょっと待て。
歩けないということは当然口もろくに利けない、ということである。RYONは自分の意志を伝えることもできず、ただ緑茶の缶を握りしめていた。残念そうな(?)Hydeくんは大人しく去り、実直なRYONの同期は、大変実直にRYONを家まで送り届けてくれた。
持つべきものは信頼できる異性の友だち。
……でも今度からは、相手がジャニーズだったら放っておいてくれ。
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