夏だ。
太陽の光というのは偉大なもので、ベランダの植物たちは競って大きくなっている。生命がもえいでる季節……夏。

植物の繁茂と同時に、動物たちも繁茂しているらしい。夜中にマックをいじっていたRYONが、ふと気配を感じて壁を見上げると、黒くて大きなゴ○○リが、もそもそと歩いていた。

どうして! ヤツが大嫌いなRYONは、生ゴミは出たらすぐに捨てに行くし、掃除も怠らない。……なのに、どうして!? 反射的に食器用洗剤を振りかけ、沈没させた。はぁはぁ。

心細くなったRYONは、近所をバイクでブイブイ走る迷惑野郎、ケンジくんに電話をかけた。つっぱってるのに優しいケンジくんは、死体を片づけに来てくれると言う。……なんと。

死体だけはしっかり残して、お部屋の掃除と確認、身だしなみのチェックをして、ケンジくんの到着を待った。単車でやってきたケンジくんは、軽く話をしながら、さりげなく死体を片づけてくれた。……なんて頼もしいのぅ……?

とっておきのハーブティなぞを飲ませてリラックスさせ、フローリングに敷いたゴザの上でゴロゴロしながらケンジくんと楽しくお喋りをしていた。…ふふふふ。

ところで、ものすごい大けがをしたとき、自分の傷口を見たりすると、「こんなに血が!傷が!」と、ショックでふぅっと眠くなったりするのだそうだ。RYONは、ゴ○○リを見たときにも、これと同じ症状が起こる。反射的に洗剤を振りまき、沈没させたあと、ぐったり眠くなるのだ。とっておきのリラックスハーブティも手伝って、RYONはゴザに横たわったまま、とろんと眠たくなってきた。

チャンスを逃さずケンジくんは、RYONの頭をさらっと撫でた。

「ガァ~~~っ!」
RYONは叫んだ。頭をかきむしり、大暴れした。

ゴ○○リの出た部屋にいたRYONは、「また出るかもしれない」という不安な気持ちでいっぱいになっており、髪の毛がモゾっと動く感触に、寝ぼけてゴ○○リの姿を想像したのだ。

「ご、ごめん!」
ケンジくんは慌てて叫び、荷物を掴んで飛び出していった。

頭を触ったくらいで叫ばれ大暴れされたら、誰だって居たたまれなくなって、出ていくであろう。脳味噌の目が覚めてきたRYONは、ふと状況を理解した。

ちょっと待って、ケンジくん! そうじゃ、そうじゃないのよう~。ああ……。なんでRYONはあのとき、同じ叫ぶにしたって「いや!」とかにしなかったんだろう……。「いやん」だったら、ケンジくんはツッパリなんだから、もっと違う方向になったかもしれないのに……!

沢山の後悔を胸に、今後、誰にゴ○○リ退治を任せたらいいのか、不安でいっぱいの日々を送っている。