先日RYONは、とある出版社でバイトをした。
半年ほど前に一度やったバイトで、それは学生がわさわさと集まって原稿のチェックをするという仕事だった。大学サークルの人たちに声をかけたら、ズグルくんという1年生が「やります」という。

バイトの前日、RYONはズグルに電話をして、詳細を説明していた。ズグルが、「どんな格好がいいですか?」と聞くので、
「あ〜、Tシャツにジーンズなんかいいねぇ〜。サッパリした格好の男の子って好きなんだよね〜」などと返事をしたら、
「……いや、あの…きちんとした格好をしなきゃいけないバイトなのかどうかが聞きたかったんですが……」だそうだ。
相変わらず自分のことしか考えてないRYONであった。

当日、待ち合わせの場所に行ってみるとズグルはTシャツにジーンズ、しかもロン毛チャパツという、いとおしい姿をしていた。
なんだかんだ言ってRYONのご要望にお応えしてくれたのだ。……愛いヤツめ。

とかいうRYONも、昨日の電話で、
「じゃあRYONはどんな格好がいい? オトナっぽい感じ? 子供っぽい感じ?」
と聞いたら、オトナっぽいのがいいというので、RYONはその日、タイトのロングスカートにチャイナカラーのシャツという、ばっちりリクエストにお応えした格好をしていた。

……ああ、なんてかわいらしいふたりなんだろう。
自分をお互いの好みに染めてみたりして。

年齢の割にあんまりオトナっぽくないRYONであるが、10歳も年下だと、いい加減3〜4つは年上のお姉さまに感じるらしい。……たまには(たまには!?)、年下の男の子を可愛がるのもいいな……。

そして待ち合わせの場所からバイト先に向かう道すがら、RYONは連れてきたもうひとりの女の子をズグルに紹介した。
ズグルと同い年の、大人しい感じのかわいい女の子であった。
「ヒトミちゃんは、茨城出身なんだよね」と言ったら、
「俺、小さい頃茨城にいたよ。桜村って知ってる?」
「え、私、桜村に住んでたよ!」
なんとふたりは同郷だったらしい。
「え、じゃあ、村上くんって知ってる?」
「ケンくんのこと?」
「そうそうケン!」
「知ってる知ってる!」
などとローカルな話になっていき、RYONのはいる隙間もなかった。

桜村は現在、よその村と合併されて消滅してしまった村らしく、そこの出身者が東京で出会うというのは、とてもノスタルジックでファンタジックなことらしい。
そのままふたりはバイト中も桜村の話に花を咲かせ、携帯の番号を交換して帰っていった。
……RYONは、オトナの女性らしく、若いふたりを見守ることになった。……がんばれ……。

先月の、5年越しの恋に引き替え、3分で終わった儚い想いであった。