夜中の1時半過ぎ、携帯が鳴った。
「俺にはもう……RYONさんしかいないっすよ」
年下の知り合いの男の子、HIROくんからだった。なんだろう、開口一番。
「……RYONさん、……飲みに行きましょうよ……」
「え、いいよ。どうしたのさ急に」
それにしてもお互い携帯同士で話してるので、電波の調子が悪いな。たまに電波がブツクサ言うぞ。
「俺、もうRYONさんしかいないんですよ」
「あんた、飲んでるでしょ!」
「……飲んでます」
「飲む約束するのはいいけど、ちゃんと覚えてるでしょうね!」
「覚えてますよ、大丈夫です」
……よく考えたら、酔っ払いになんの意志確認をしたところで、信用ならないことには変わりなかった。
「俺、酔ってますけど意識はちゃんとしてますから! RYONさん、絶対ですよ」
ああ、はいはい。
RYONは賭け事が好きだ。
過去に何度、「早く彼氏(彼女)を見つけたほうが勝ち」という賭けをしたことか。そのたびに「ねえ、あの賭け、勝ったみたいなんだけど」などと言われ、ご飯だの酒だのをおごらされた。
一度も勝ったことがないというのに、なぜかまたRYONは知り合いのお姉さんと賭けちゃったのである。賭をするのはいいけど、どこにも当てがなかったRYONは、勝ったほうが「よろしくね」と負けたほうにワインをご馳走することにしよう、などとしっかり保身を考えていたのだった。ただ酒が飲めるなら、負けてもそれほど痛くない。
先日、そのお姉さんからメールが来た。
「賭に勝ちそう。ワイン、何がいい?」
しかしやっぱり負けは悔しい。……この際、どかんと引っかかってきたHIROくんに網にかかってもらうか。
「いつにする? RYONは週末ならいつでもいいけど、早いうちにしようか。10日は?」
善は急げだ。どうせなら賭けに間に合う日程にしないと。
「10日は俺の誕生日なんです」
「ふぅん?」
「だからその日は彼女とお泊まりイベントがあるので、次の週末、17日にしましょう。3対3でいいですか? かわいい子連れてきてくださいね、RYONさんよりも」
……え? 飲みのお誘いって、合コンなの??
合コンには「幹事MAXの法則」というのがあるらしい。
自分よりもかわいい子を連れて行くと、その子ばかりチヤホヤされて面白くないので、幹事の女の子は絶対に自分よりかわいい子を合コンに連れていかない、というのである。だから「幹事の女よりもかわいい子を期待するな」というのは、鉄則なのだそうだ。……というのを教えてくれたのはHIROくん、あんたじゃなかったっけ。
しかも、夜中に酔っぱらって合コンの誘いとは、なんか怪しいことこの上ない。……とか言いつつ、つい引き受けちゃって、数少ない女友だちに声をかけてるRYONであった。
……というわけで、来週は久しぶりに大勢で飲みます。それまではひとりで前夜祭だ、う〜いちくしょう。
|