最近大好きな西宮くんと、デートすることになった。毎回、デートの前は自作ボディケアに精を出すRYONだが、今回のRYONの作戦は、「マヨネーズヘアパック」である。RYONの髪は、金髪に続いて銀髪になり、現在ギシギシのガビガビに痛んでいる。せっかくデートしても、こんな髪では触媒にならないではないか。

ブリーチだのカラーリングだのを繰り返した髪は、タンパク質が流出しているため、手触りが悪いのだそうだ。で、これにマヨネーズでタンパク質を補給しようというのである。お風呂に入ってまず牛乳で髪を濡らし(牛乳パックってのもタンパク質を補給するとか)、マヨネーズを塗る。頭をタオルで巻いて、湯船に入って30分。これを1週間続けた。

あったまった牛乳は、なんとも強烈な匂いを発していたが、意外なことにマヨネーズはほとんど臭わなかった。で、洗い流してシャンプーするんだけど、泡立ちがものすごくいい。ベタベタしてるから泡だたなさそうなのに、なんでだろ?

で、1週間、ヘアパックを続けた結果であるが、これがよくわからない。3日間くらい、えらく髪がサラサラだったのだが、デートの当日、RYONは美容室に行ってアイロンで髪を伸ばし、セットをしてもらうという裏技に出たのだ。牛乳、マヨネーズ、美容院でつけてくれた栄養ジェル、これらのどれかが、アイロンの熱で髪に浸透したようだが、それがなんなのかは、わからずじまいである

デートが終わっちゃったら、わざわざ試す気にもならない。そしてRYONは、万全に整えたヘアと、とっておきの着崩した巻きスカートで出陣した。どこに行こうかと話しながら歩いていたら、西宮くんが「ここはどう?」と目の前の店をすすめた。

煌々と蛍光灯が光る明るい雰囲気の、お好み焼き屋さんだった。……ここからして、間違ってることにRYONは気付くべきであった……。つつがなく注文を終え、中ジョッキを抱えてると、お好み焼きの具が届いた。「ここは私が働いて、アピールしなきゃ」RYONは具をかき混ぜた。さあ焼くぞと具の器を傾けたら、西宮くんは、がっとRYONの手を掴んだ。

「待て。まず油だろ」

油を塗り、具を垂らした。さあそろそろ焼けたかなと、ヘラを掴んだ。
「あぢっっ!!!」RYONはヘラを放り投げ、叫んだ。
鉄板の縁でヘラはメラメラと熱くなっていたらしい。

気を取り直して、ひっくり返したお好み焼きを等分しようとしたら、西宮くんは、がっとRYONの手を掴んだ。

「待て。まずソースだろ」

ああそうかと、ソースを掴んだ。
「あ゛っ!!!」掴んだソースのフタがスポンと抜け、本体が鉄板の上をゴロンゴロンと転がった。

RYONはもう、こう言うしかなかった。
「いや〜、お料理教室でまだお好み焼きを習ってないからさ……」
いったい何年料理教室に通えば、お好み焼きを習えるというのか。

お好み焼き後、西宮くんは「眠い」とか言いだして、さっさと帰ってしまった。世の中の片想い中の女性よ、デートするときは、出来上がったモノがサーブされる店に行こう。