パムッカレの石灰棚。一面に広がる白い棚はすごいの一言。夕方になると夕日が棚をピンク色に染める。

私はトルコに来たら、必ず訪れたい場所が2つありました。それは両方とも、自然がつくり出した不思議で幻想的なところなのです。その1つがパムッカレです。「綿の城塞」を意味するパムッカレは、その名の通り、斜面全体を覆いつくすような真っ白い段々畑が広がる石灰棚です。各棚には淡い水色をした温泉水が溜まっています。遠くから見るとスキー場かと思えるような、その棚を裸足で歩くことができるのです。自然がつくり出したこの景観はとても幻想的でした。ただ、最近では観光開発のあおりで、温泉が枯渇してきたため、石灰棚にはそれほど水が溜まっていないそうで、とても残念です。もう1つは世界遺産にもなっているカッパドキアです。広大な土地は、どこかの惑星かと思えるような奇岩で埋めつくされています。その眺めは本当に不思議でした。これが、火山岩が雨風に侵食されてできたものだとはとうてい思えません。ちなみにカッパドキアワインはすっきりしていておいしかったです。

さて、またトルコ料理についてお話ししましょう。ケバブはいまいちでしたが、魚介類はたいへんおいしかったのです。ガラスケースにディスプレイされた魚を選んで好みの調理をしてもらえる店がありました。そこで食べたボイルのエビとヒラメのムニエルは、今まで食べたことのないくらいのおいしさでした。イスタンブールの旧市街のクンカプとい場所には、シーフードレストランが軒を連ねるストリートがあります。石畳のそのストリートは、どこもオープンカフェ風になっていて、とても雰囲気のよいところです。味のほうも素晴らしく、とくにロブスターは高かったのですが、今まで食べたどこの高級レストランよりもはるかにおいしく、上品な味でした。私は魚介類に関してはたいへん満足しました。

 

カッパドキアの奇岩が林立している。これらが自然のつくり出したものかと思うと、偉大さを感じる。

トルコミニ知識/チャイなしには始まらない
トルコでは、何ごとにもチャイ(紅茶)なしには始まらないというほど、チャイをよく飲む。小さいガラスにそそがれ、添えられた角砂糖を溶かして、甘さたっぷりで飲む。ミルクなどは入れない。朝食で、街角で、バスターミナルで、じゅうたん屋でよく飲む。ほかにアップルティーも有名で、日本で飲むものとは異なり、最初ものすごく薄そうに見えるのだが、飲むとしっかりリンゴの味がしておいしい。

 

今回、トルコを旅して感じたのは、旅行がしやすいだけでなく、トルコ人は日本人に好意的であることです。私は道中何度も日本人だからと話しかけられたり、旅のアドバイスをもらったり、バスのチケットをとってもらったりしました。中にはじゅうたんを売りつけるために、近づいてくる人もいましたが、基本的には皆やさしく接してくれました。おかげで、旅が何倍も楽しいものになりました。観光地も歴史的建造物だけでなく、自然がつくり出した景観や地中海の眺めなど、私を飽きさせませんでした。ぜひ、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

 

伊藤香織 PROFILE
32歳。旅が好きで旅行代理店の営業として6年間勤めていたが、あまりの忙しさで自ら海外に行けたのは年に1回程度。好きなものを仕事に選んではいけないことを悟り、3年前よりフリーのライターへ。現在は、今まで溜まっていた欲求を発散するかのように、世界を旅してまわっている。