意外にアイルランドのことは知られていない

今回ぼくは、この「アイルランド旅日記」を書くにあたり、一般の日本人のアイルランドに対する知識がどのくらいあるか、20代〜30代前半100人のアンケートをとってみた。(内訳・女性80人、男性20人)

アイルランドという国は知っていますか? の質問にYESが94人。NOが6人。アイルランドの首都は? の質問で、ダブリンと答えられたのは全部で25人。そのうち男性が10人で、ふたりにひとりは知っていたのだが、女性の割り合いは、約19パーセント。女性に認知度の低い国であることがわかる。また「パフィーの歌で知っている」という答えが多いのには笑えた。

最近はアイリッシュ・ミュ−ジックに人気が集り、アイルランドが本拠地であるケルト文化ゆかりのアートが紹介されるようになったとはいえ、まだまだ知られた国とはいえない。かくいうぼくも、アイルランドにかかわって初めて知ったことがたくさんある。ケネディ大統領も、マッカーサーもケルト人系移民がルーツであること。大ヒットしたタイタニックの歌もマッキントッシュも、アイルランド生まれであること。

アイルランドは地味ながらも存在感があり、他の追随を許さないオリジナリティあふれた国であることは確かなのだ。

 

(写真下)アイルランドの海は、どんよりとした雲がよく似合う。緯度が高いので、冬はひどく寒く、雪が降ると思っている人も多いが、実はめったに降らない。海流の影響で、寒暖の差が比較的少なく、夏は14〜17度、冬は4〜8度くらいである。

アイルランドミニ知識/文化財産は、ギネスビールだけじゃない
アイルランドは、4人ものノーベル賞作家を輩出した世界一の「文学の国」。ウィリアム・バトラー・イエイツ、バーナード・ショー、サミュエル・ベケット、シェイマス・ヒーニーの4人がノーベル文学賞を受賞。その他、『ユリシーズ』のジェームズ・ジョイス、『ドラキュラ』のブラム・ストーカー、『ガリバー旅行記』のジョナサン・スウィフト、『サロメ』のオスカー・ワイルドもアイルランド人だ。アイルランドは、大きさでいえば北海道くらいの小さな国だが、これだけ著明な文学者が一同に集っているのは、世界広しといえど他にはない。

 

そして再びアイルランドの住人に

ぼくの旅は、アイルランドに始まりアイルランドに終わったわけではない。最初に旅をしたのは、イタリア、フランス、ベルギー、オランダ、イギリス、アメリカを廻り、中近東も訪れた。その過程でアイルランドに短期留学したのだが、いちばん長く滞在したせいか、アイルランドの居心地が最高だと感じた。アイルランドには、特に刺激的な何かがあったわけではない。たとえばパリのエッフェル塔やロンドンのビッグベンといった、観光客を納得させる、ランドマークのようなものはこの国にはない。だが、人々の暮らしぶり、観光客に踏み荒らされていない大自然、ケルト文化の本拠地であるアイルランド独特の歴史には、強く惹かれるものがあった。ゆっくり滞在してじっくりそのよさを味わいたい。そんな風に感じた。

初めてアイルランドに短期留学してから約半年後。ぼくは日本でアルバイトに励み、お金を貯め、再びこの国の留学生となった。そして今は、この地で何かを掴むまでは、日本に帰るまい、と決心している。

 

NOBU-Q(ノブック)PROFILE

本名、杉村信久、25才。1999年に突然サラリーマン生活に終止符を打ち、アイルランド留学を軸にヨーロッパとアメリカを旅した。帰国後、留学資金を貯め、再びアイルランドへ。ロシア、バルト三国、北欧などをまわる「呑んだくれの旅」も計画中。