「パンデミック」ってどんなもの?

パンデミックとは、感染症が世界規模で大流行することです。感染症(エピデミック・epidemic)が、通常の規模を超えて広がることを感染爆発(アウトブレイク・outbreak)といい、これがさらに拡大し、複数の大陸に蔓延した状態が汎発性流行(パンデミック・pandemic)です。



今までにパンデミックはあったの?

人類は過去に、パンデミックといわれるような状況を何度か経験しています。14世紀にヨーロッパで3000万人が命を落としたといわれるペスト(黒死病)、19世紀から20世紀にかけて地域を変えながら7回の大流行を起こしたコレラ、中でも、史上最悪とも言われるパンデミックを引き起こしたのが20世紀初頭の「スペインかぜ」とよばれるインフルエンザです。その後もインフルエンザは20世紀に3回のパンデミックを引き起こしています。1957年には「アジアかぜ」、1968年には「香港かぜ」によって、世界で百万人単位の犠牲者が出ています。また、犠牲者はそれほど多くありませんが、1977年には「ソ連かぜ」が流行しています。

史上最悪のパンデミック「スペインかぜ」って?

第一次世界大戦の終盤、1918年〜1919年にかけて世界中で大流行したインフルエンザが「スペインかぜ」です。ただし、当時はまだウイルスの分離技術がなかったので、その病原体は不明とされていました。「スペインかぜ」は、わずか1年ほどの間に、当時の世界人口約18億人のうち6億人が感染、地球上の3分の1の人が感染し、5000万人もの死者が出たといわれています。最初の発生といわれているのは1918年の3月、アメリカのシカゴでした。米国発であるにもかかわらず「スペインかぜ」と呼ぶのは、情報が最初にスペインから発信されたからです。この「スペインかぜ」の大流行により多くの死者が出たため、第一次世界大戦終結が早まったといわれています。



なぜパンデミックが起きるの?

インフルエンザウイルスは数十年周期で大きな変異を起こし、まったく新しいタイプのウイルスに進化します。新しいタイプのインフルエンザウイルスが発生すると、誰も免疫を持っていないため、どんどん人に感染し、それが世界的な大流行、つまりパンデミックを引き起こすのです。地球上の人間は凄まじい勢いで増えていますが、人口の爆発的増加によって、世界各地に人口密集地域ができたこともパンデミックを引き起こす原因のひとつです。人と人との距離が近ければ近いほど、ウイルスが感染しやすくなるからです。

パンデミックはどのくらいの速さで進行するの?

「スペインかぜ」は発生から世界中に広がるまで7か月かかったといわれています。現在では、技術の進歩によって交通機関が発達し、物流の量・速さが飛躍的に増大しました。昔は船で数か月かかっていた距離が、現代では飛行機に乗れば1日足らずで移動できます。人に感染したウイルスも発達した交通網に乗って、あっという間に世界中に移動してしまうのです。第一次世界大戦当時は7か月かかった感染も、現在では、世界のどの地域で新型インフルエンザが発生しても、1か月以内で世界中に広がると予測されています。

なぜ「新型インフルエンザ」は恐れられているの?

ウイルスが変異してまったく新しいタイプのものになるのが「新型インフルエンザ」です。人類が免疫を持たない、この「新型インフルエンザ」には、さまざまなタイプがあり、もっとも恐れられているのが鳥由来のインフルエンザです。現在、世界中で高病原性鳥インフルエンザが、野生の鳥や家禽の間で大流行しています(高病原性鳥インフルエンザという呼称は、鳥に対して特に病原性が高いインフルエンザの呼び方で、人間に対する病原性のことではありません)。高病原性鳥インフルエンザは、弱いながらも人間に感染する力があり、その場合の致死率は60%以上になります。そのため、高病原性鳥インフルエンザウイルスが大変異して、人から人へ感染するウイルスに進化すると、世界中で大きな被害が起きる恐れがあるのです。人類の歴史に登場したインフルエンザは、もともと、鳥インフルエンザウイルスが進化して、人間にも感染するようになったものだと考えられています。



今流行している豚インフルエンザなら危険度は低い?

鳥インフルエンザに比べ、毒性が低いのではないかといわれている豚インフルエンザですが、必ずしも危険度が低いとはいいきれません。人間と豚は細胞の構造が似ており、豚インフルエンザが人間に感染するだけでなく、人間から豚に感染することもあるのです。また、鳥と豚も同じウィルスに感染します。つまり、人と鳥との感染が稀だとしても、豚の体を介して、鳥インフルエンザが豚インフルエンザと合体し、毒性の強い新型インフルエンザに突然変異する可能性があるのです。もしもこの毒性の強い新型インフルエンザが登場した場合、最悪のシナリオでは世界中で死者1億5000万人に達するだろうと、国連では試算しています。また日本の厚生労働省でも、国民の4分の1にあたる3200万人が感染、死者は60万人を超えるだろうと予測しています。

(2009.5.5 取材/ジャーナリスト・金子保知)

新型インフルエンザ関連サイト
政府公報オンライン「新型インフルエンザ対策」
厚生労働省「新型インフルエンザ対策関連情報」
『新型インフルエンザ』個人でできる対策PDF16ページ
国立感染症情報センター
外務省海外安全ホームページ