「脳年齢」っていったい何のこと?

最近、脳年齢という言葉をよく聞きます。脳年齢とはいったい何のことでしょうか。肌年齢とか肉体年齢という言葉があるように、脳にも年齢があるのかもしれませんね。



脳は鍛えれば若返る

実際の年齢より明らかに肌が若々しかったり、体がたくましく、動作も機敏な人って少なからずいます。肌は日ごろからきちんと手入れをしていれば、若々しさを維持することは可能です。同じように肉体も鍛えれば実際の年齢より若く見えるはずです。肌や肉体は実際に目で見て確認できますが、果たして脳はどうなのでしょうか。

実は私たちの肌や肉体が年齢とともに低下するように、脳の機能も青年期を過ぎると、あとは歳とともに低下するのです。そして、脳もまた肌や肉体同様鍛えれば若返ることがわかっています。そのいちばんの方法は簡単なことですが、毎日脳を使うことです。どうも最近記憶力が悪くなってきた、物忘れが多くなったというあなたでも、脳を鍛えればこうした症状は改善され、若々しい脳がよみがえってきます。

脳の前頭前野が若さのポイント

最新の研究によると、脳年齢が若いかどうかは脳の前頭前野という部分がいかに働いているかどうかが関係しています。私たち人間の大脳は前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の四つの部分に分かれています。このうち、ひたいのすぐ後ろにある前頭葉の大部分を占めるのが前頭前野です。前頭前野は人間だけが特別に発達していて、ものを考えたり、判断したり、人間らしいことをつかさどる部分で、脳の中の脳と呼ばれるほど重要な働きをしています。

もうひとつ。他人と会話をするときにも前頭前野をひんぱんに使っていることがわかっています。つまり、脳年齢とは前頭前野が働いているか、いないかで変わってくるというわけです。



前頭前野を鍛えれば脳はさらに若返る

テレビCMなどでご存じのように、脳は鍛えれば若返ることがわかっています。そのためには何をしたらいいのでしょうか。もちろんゲームでもかまいませんが、前頭前野は新しいことをすると活発になるのです。ところが脳の機能はとても複雑にできていて、過去に自分が学習したことはきちんと記憶していて、単純なこと、慣れたことをするときには前頭前野はあまり働かないのです。前頭前野は脳にさまざまな命令を出す、いわば脳の司令塔ですが、常に新しいことにチャレンジしていないと働きは鈍くなってしまいます。前頭前野の命令が脳の各部分に的確に行きわたらないということは、つまり記憶を引き出す働きが鈍くなるということと同じです。

いわゆる脳年齢は前頭葉の前頭前野がよく働いていること。脳年齢が若い人は前頭前野をよく使っている証拠なのです。

脳の若返りにゲームは最適?

東北大学の川島隆太教授によると、前頭前野の働きをよくするためには、「音読」や「計算」が効果的なトレーニングになるそうです。脳を鍛えるには簡単な計算を解いたり、文章を声に出して読んでみるだけ。これなら面倒くさがり屋のあなたでも始められますね。さらに、トレーニングは継続することが大切だと川島先生は指摘しています。トレーニングを行う時間は脳がもっとも活発に働く午前中に、ほんの数分行うだけで効果が上がるそうです。



その他、前頭前野を鍛えるには、毎日1分間、家族でも恋人でも、また友人に対してでもかまいませんから、何かテーマを決めてスピーチをするのも効果的だといわれています。この方法は、人前でしゃべることや自分で考えながらしゃべることで、脳全体が活性化し、脳年齢も若返るというわけです。

血圧や体温のように脳年齢は目に見えるものではありません。そして、測定する機器やチェック表によっても違ってきます。実際の年齢より高かったからといって悲観する必要もないし、実年齢より若かったからといって、自慢することでもありません。数値はあくまで数値であって、あなたの脳の状態を示すものではないのです。いかに脳を効率よく働かせるかが問題なのです。もちろん30歳のあなたの脳年齢が10歳では困りますが……。

(2007.7.17 取材/ジャーナリスト・金子保知)