石油はあと何年もつのだろう?


石油はあと何年もつのか? あと40年、いや50年だ、いやいやあと100年はだいじょうぶ……いろんな意見が出ては消え、出では消え、それでもいまだに40年説がいちばん幅をきかせています。本当のところ、石油はあとどのくらいで枯渇するのか!? 取材してみました。

石油っていったいなんだ?

いうまでもなく、石油は数億年前の生物の死骸が、地球の中で長い時間をかけて化学変化を起こしてできた、化石燃料といわれています。ところが長い間、石油の成因には大きく2つの説があり、ひとつは「無機起源説」と呼ばれ、有機物すなわち生物の死骸などは成因に関与していなという無生物起源説。もうひとつは「有機起源説」、つまり冒頭で述べた生物の死骸が化学変化を起こしたという説ですが、現在ではほぼこの「有機起源説」に意見が統一されています。

その中でも別名「ケロジェン(有機物)起源説」と呼ばれる「続成作用後期成因説」が最も有力な成因とされています。この説によると、生物の死骸は海底や湖底に堆積し、そのほとんどがケロジェンと呼ばれる物質に変化します。このケロジェンが地球深くの熱によって分解され石油になったといわれています。


石油はどう溜まる?

「ケロジェン起源説」をもとに説明すると、地下深くの熱によってケロジェン(有機物)が分解され、水、二酸化炭素、炭化水素が生成されます。こうしてできた炭化水素が特定の地層に溜まったものを油田といいます。

ところで、この油田の多くは「背斜トラップ」とよばれる油を通さない岩層に移動し貯留します。といっても石油は湖や沼のようにたまって存在しているわけではなく、砂岩や石灰岩などの「貯留岩」の隙間や孔に溜まっているのです。こうして岩の隙間や孔に溜まった石油に針をさしてくみ上げています。石油掘削の技術は飛躍的に進み、かつては数千メートルの深さまでした掘れなかったのですが、今は1万メートルを超えるようになっています。

日本にも石油は出る?

中学生のころ、地理で学んだと思いますが、日本にも細々ですが石油が産出しています。北海道の石狩油田をはじめ、秋田県、新潟県などに油田がありますが、埋蔵量も少なく、コスト的に見合わないため、産業としてはほとんど成り立っていません。

こうした地域の石油の多くは、3500万年から1000万年の時間をかけてつくられたもので、地下4000メートルもの深い場所にあります。江戸時代、これらの油田から自然ににじみ出た石油は独特の臭みがあるため、くさい水“くそうず”と呼ばれていました。同じく江戸時代の元禄のころに書かれた書物には、燃える井戸“火井”が紹介されています。これは今でいう天然ガスの炎のことですが、当時の人には不思議な出来事だったようです。

その後、明治になって灯油が輸入されるようになり、石油が商品として流通されるようになると、日本でも本格的な石油産業が生まれてきました。1920年代になると、当時の石油需要の75パーセントを国産の石油で賄っていたという、にわかには信じられないような記録が残っています。



油田が中東に集中しているのはなぜ?

現在、世界の大規模油田の半数近くが中東に集まっているといわれています。その大きな理由に、石油の原料となる生物が多かったことがあげられます。恐竜が闊歩していた1億年ほど前、このあたりは亜熱帯の暖かい海の底だったことがわかっています。暖かい海は当然生き物も多く、結果として大規模な油田ができたと考えられています。前章で紹介した日本の油田はなぜ規模が小さいのかというと、日本は地震が多いことでも知られるように、地殻変動が激しく、それに伴って油田も移動してしまうため大規模な油田が形成できないと考えられています。

ところで石油はあとどのくらいもつ?

石油はあとどのくらいもつのか? 正直に申し上げてよくわかりません。かつてはあと40年とかいわれましたが、そういわれた出したのが今から20年も前のことだから、残り20年……という話はあまり聞こえてきません。実は石油はどの国にとっても大切な戦略物質であるため、どの産油国も正確な数字は出していないからです。

世界中の石油はあと何年で底をついてしまうのか、という質問に対する答えは、埋蔵量を生産量で割った数値ということになります。その結果がおよそ40年となったわけです。ところが、新しい油田が発見されたり、新技術が開発され今まで採掘されなかった石油が採れるようになるなど、埋蔵量の値も生産量の値も違ってきてしまえば、当然、あと何年で枯渇するという数字も違ってくるわけです。

大学教授や研究者、技術者など石油の専門家は「あと40年や50年では石油はなくならないだろう。だが今世紀中には地球から石油は姿を消すだろう」と警告を発しています。



石油がなくなるとどんな影響が出る?

ある調査によると、日本が輸入している石油のうち40パーセント以上は発電などの熱源として使われ、そのほぼ同じ量を自動車や飛行機、船舶などを動かす動力源として使っています。残り20パーセントほどがプラスチックなどの工業製品の原料となります。つまり日本から石油がなくなると、ほぼ生活は成り立たなくなってしまいます。
石油の残りはあとわずか。私たち人類は早急に新しいエネルギーを見つけなければなりません。限りある資源。大切に使いたいものですね。

(2006.11.7 取材/ジャーナリスト・金子保知)