改めて知っておこうアスベストの恐怖

そもそもアスベストっていったい何?

アスベストとは天然に存在している鉱物の一種で、日本語では石綿(いしわた・せきめん)と呼ばれています。このアスベストにはいくつかのタイプがあり白石綿と呼ばれるクリソタイル、青石綿と呼ばれるクロシドライト、茶石綿と呼ばれるアモサイトの3種類が代表的なもので、健康被害をもたらすアスベストも多くはこの3種類です。

アスベストは火山から噴き出た溶岩が冷やされるとき、特殊な条件下で結晶が繊維状に成長したもので、その繊維の1本は人間の髪の毛の実に5000分の1といわれるほど細いのに、綿のように柔らかく、火にくべても燃えません。このように、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性などに優れているうえ、値段も安いため、日本では「奇跡の鉱物」と呼ばれ、さまざまな用途に使われてきました。

一例をあげると、中学生のときに理科の実験でビーカーに入れた水をアルコールランプで沸かす際に四角い金網を使ったのを覚えていますか。あの金網の真ん中の白い部分がアスベストです。化学的に安定していて耐熱性にも優れているため、手軽に使われていました。



他にアスベストを使ったものはある?

まだまだたくさんありますが、アスベストの9割は建材製品に使われています。中でも、昭和30年代から50年代初めにかけては、建物の耐熱コーティング材として表面にアスベストを吹き付けて断熱層をつくったため、現在立て替え時期のきたそれらの建物の解体に際しては、アスベストの飛散が問題視されています。

また、アスベストは補強材としてセメントと混ぜ強度を高めるためにも使っていました。その他、アスベストで補強したセメント水道管などがあります。また自動車のブレーキの部品としてアスベストは大量に使われていました。家庭で身近に使われるトースター、ジューサー、照明器具、ドライヤー、電気こたつ、掃除機などの工業製品にもアスベストは使われていました。1960年代から1970年代にかけて生産されたこれらの家電製品には、アスベストが使われている可能性があるため、絶対に解体などしないようにしましょう。

アスベストはなぜ怖い?

アスベスト自体が存在していても特別に怖いことはありません。直接触っても何の害もありませんし、極端な話、舐めても害はありません。ではなぜアスベストが怖いのかというと、ひとつはその極細の繊維にあります。細いために簡単に空中に飛散して、私たち人間が吸い込んでしまうからです。そのうえ、細い繊維は肺の組織に突き刺さり、体外に出ることがありません。そして、このアスベストの繊維を吸い込んでから20年、あるいは40年50年たってからさまざまな症状が現れてきます。

またアスベストが怖いもうひとつの理由は、粉塵になるからです。炭鉱をはじめ粉塵の多く出る職場で仕事をしていた人に塵肺などの病気が多発していますが、古い建物の取り壊しなど、アスベストも粉塵として吸い込むことのほうが多いのです。

「奇跡の鉱物」は、いつの間にか「静かな時限爆弾」へと変わっていたのです。



アスベストによる病気にはどんなものがある?

アスベストが原因で発症する病気としては、肺繊維症(塵肺)、悪性中皮腫、肺がんなどがあります。肺繊維症は肺が繊維化してしまう病気で粉塵や薬品などさまざまな原因がありますが、アスベストによって発症した肺繊維症を特にアスベスト肺と呼んでいます。仕事などでアスベストの粉塵を10年以上吸い込んだ人に多く、潜伏期間は15〜20年と長く、粉塵を吸い込まなくなっても病状は進行します。

肺がんは15年から40年もの長い潜伏期間があり、アスベストを吸い込んだ量が多いほど発病の危険性が高いといわれています。

悪性中皮腫は肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓や大きな血管の端を覆う心膜などにできる腫瘍で、若いころにアスベストを吸い込んだ人に多く見られます。潜伏期間は20〜50年。治療には外科治療、抗がん剤治療、放射線治療などがあります。

アスベストの対策はどうなっている?

アスベストが人体に悪影響を与えるということは100年も前から指摘されていましたが、1972年にWHOの下部組織である「国際がん研究機関」の専門家会議が、アスベストの発がん性を指摘、その後世界中の科学者や組織の研究報告によりアスベストは次々と規制されてきました。1993年にはEUが青石綿と茶石綿の使用を禁止を宣言。ヨーロッパ諸国と比べると対策が遅れ気味だった日本でも、平成7年に青石綿と茶石綿については労働安全衛生法に基づき製造等が禁止となりましたが、白石綿に関しては平成16年に製造等が禁止となるまで、建材や磨耗材などに使われていました。現在でもアスベストにとって代わるものがない配管の接合部分に使うシール材などはアスベストの使用が認められていますが、これらも平成20年までには全面的に使用禁止となる予定です。



身近にアスベストはある?

前にも言いましたが、アスベストの9割は建材製品として使われてきました。一般の住宅でアスベストが心配な場所として考えられるのは、耐火被覆材などとして吹き付けられた箇所の他、屋根材、壁材、天井材等としてアスベストを吹くんだセメントを板状に固めたスレートボードなどがありますが、普通は一戸建てにはないと考えらています。ただしマンションでは駐車場にアスベストが使われている可能性があります。

現在、製造や販売されている日用品や電化製品にアスベストが使われている可能性は低いと考えられています。魚焼きの網に関しても現在アスベストを使った網を製造している会社はないとのこと。またアスベストを含んだ水道管を通ってきた水を飲んでも害はないといわれています。

アスベストが本当に怖いのは粉塵やアスベストの繊維を簡単に吸い込んでしまうことと、発病までの潜伏期間が長いこと。私たちにできることは、古い家屋やビルの解体現場には近寄らないこと、少しでもアスベストによる健康被害に心当たりがあるときは、速やかに医師の診断をうけましょう。都道府県や市町村には必ずアスベストの相談窓口がありますので利用しましょう。


(2006.9.12 取材/ジャーナリスト・金子保知)