犬の習性を利用したトイレトレーニング

オオカミは、たいてい洞穴のような周囲を囲まれた場所で生活をしています。犬の場合も、ケージ(サークル)を利用して周囲を囲い、中にベッドを入れた場所(ハウス)を用意してあげれば、洞穴の代わりになり、ゆっくり休むことができます。

また、オオカミは巣の中で排せつをしません。常に巣の中は清潔な状態に保たれています。よく犬はきれい好きだといわれる理由も、ここから来ています。この、巣を汚さない習性を利用して、正しいトイレトレーニングを行えば、犬によっては2、3日できちんと用をたすことができるようになります。

犬を飼って、最初にしなければならないしつけが、トイレトレーニングです。ハウスとトイレを別の場所に用意し、時間がくるたびに飼い主がトイレに連れて行って、排せつを教えます。そうしてハウスの中をきれいに保てば、犬もハウスを汚したくないという気持ちが強くなり、きちんとトイレができるようになります。

とくに子犬は、我慢できる時間が短いので、このトイレの習慣が身に付くまでは、「飼い主は犬に付きっきりでいなくてはならない!」というくらいの覚悟がなくてはなりません。アメリカやヨーロッパでは、「子犬の時間のかけられない人は、犬を飼う資格がない」といわれています。日本人には厳しい意見ですが、犬を連れて来た当初は、それくらい重要な期間なのです。

それが、犬を飼い始めても、朝から出かけてしまい、夜まで帰ってこなければ、犬は中で漏らすしかありません。当然、不潔であることに平気になってしまいます。または、まだトイレの習慣が身に付いていないのに、最初からハウスとトイレの間を自由に行き来できる状態にしてしまうと、どこででも排せつするようになってしまいます。

また、家に連れてくる前の環境によっては、トイレの習慣が身に付くまで時間がかかることもあります。愛情を持って、真剣に取り組んでいるブリーダーなら、ハウスの中で排せつさせるようなことはしないので、犬もきれい好きです。トイレトレーニングも簡単にできると思います。ただ、残念なことに不衛生な環境下で犬を管理しているブリーダーもいるし、ペットショップで売られている犬も、中で漏らしてしまっていることがほとんどです。こうした犬は、ハウスを汚さないという習慣がないので、トイレトレーニングも簡単にはいきません。しつけを始める際の、この差は思いのほか大きいものです。

犬だって、野菜は必要!

オオカミは肉食、犬は雑食といわれています。ですが、野菜の消化が苦手なので、肉に片寄った雑食です。オオカミは狩猟により、草食動物を捕らえるわけですが、真っ先に内臓を食べるといわれています。内臓には、草食動物が消化した草が詰まっているので、肉食といえども野菜を摂取しているわけです。ですから、犬も消化は苦手ですが、野菜が必要なのです。それを知らず、肉類ばかり与えていては、腎臓病などの疾患になることがあります。犬は、人間よりも寿命が短いので、できるだけ病気で苦しむ期間はなくしてあげたいと、飼い主なら誰でも思うことでしょう。ですから、食事には気をつかう必要があります。

犬を飼うのに必要なのは、気構えと覚悟

以上が、犬の特徴的な習性です。犬の習性を理解することは、しつけや犬の健康管理に大変役に立ちます。見た目がかわいい小型犬でも、甘やかしてすべてを許してしまえば、アルファになり、飼い主の言うことを聞かない問題児になることもあります。こんなに小さくても、元はオオカミなんだと認識して接していれば、それも防ぐことができるはずです。多少厳しく、大げさな言いかたですが、犬はオオカミとイコールだという気構えでいれば、それほどしつけを間違えることもありません。

ただ、こうした習性を理解した上で犬を飼っている人は、ほとんどいません。犬を飼うなら、最低限理解してほしいことだと、私は思っています。インターネットで安易に購入したり、ペットショップに入って、透明ケースに入れられている犬を見て、つい衝動買いをしてしまうように、簡単に犬を買えることが、問題なのかもしれません。

真面目に愛情を持って携わっているブリーダーの中には、「日本は、犬の値段が安すぎるんだ。もっと高くなれば、衝動買いはなくなるし、ペットショップにも置けなくなる。そうなれば、もっと犬を飼うということに真剣になってくれるかもしれない」と言う人もいます。私も、その意見には一理あると思います。犬を飼うということは、家族がひとり増えるのと同じことですから、それなりの覚悟が必要だと思います。きちんとしつけをして、よいパートナーシップを築ければ、これほど楽しいことはありません。そうなるためにも、犬の習性を理解しておくことはとても大切だと思います。