犬を飼うと決めてから、まず最初にするのが犬種選びです。犬は長い歴史の中で、用途と目的に合わせて改良が重ねられてきました。その結果、さまざまな種類が誕生しました。体の大きさ、性格、運動能力など、犬種によって特性が異なります。現在では、本来の目的に従事する犬も少なくなり、その特性は薄れてはいるものの、それでも犬種ごとに異なる特性が見られることは事実です。つまり、犬種の違いは、容姿が異なるだけではないのです。飼いたいと思う犬種が、自分のライフスタイルに合っているかどうか、よく検討してみることが大切になってきます。

例えば、テリア系の犬種は、見た目はかわいらしいですが、比較的性格がきつく、支配性、攻撃性が強いという傾向があります。活発な分、うまくしつけられなければ、咬み癖がついたり、無駄吠えをする犬に育ってしまいます。ただし、このことはテリア種だけではなく、すべての犬にいえることなのですが、咬み癖のある犬は、小さなお子さんのいる家庭には向きませんし、無駄吠えによって、近所に迷惑を被ることにもなってしまいます。こうなると、人間と犬のよいパートナー関係を築くことができません。

犬種を選ぶ際のポイントは、まず経済的な点(とくに大きい犬は、獣医代、食費などすべてが高額になってきます)をクリアしているか。次に、自分のライフスタイル(インドア派かアウトドア派かによっても、犬種が変わってきます)に合っているか。さらにあなたの性格を考慮して、活動的な犬がよいか、のんびりして、あまり活動的でない犬がよいか。こうしたポイントから犬種を絞っていきます。飼う前に相談にのってくれる、ドッグトレーナー(しつけ面だけではなく、犬種の特長、ブリーダーに関しての知識など、オールマイティに対応してくれる)のカウンセリングなどを受けられるのがベストです。

また、人気犬種を選ぶ際にも注意が必要です。日本では、かつてはシベリアンハスキーやヨークシャテリア、現在ではチワワやトイプードル、ミニチュアダックスフンドなどというように、頻繁に人気犬種が移り変わります。ところが、欧米では、人気犬種のランキングにほとんど変動がありません。これは、自分のライフスタイルに合った犬を選ぶことが常識となっているからなのです。

日本の場合、ブームになると、繁殖が盛んに行われるようになります。中には、心ないブリーダーによって無理な繁殖が行われ、近親交配が繰り返されたり、骨格や性質に問題のある犬でも平気で繁殖が行われます。そうして生まれてくる子犬は、心身ともにさまざまな問題をもつケースが大半です。さらに、価格も高騰するという悪影響も及ぼします。もちろん、きちんと繁殖をしているブリーダーもいますが、人気犬種にはこうした問題点があるということを覚えておいてください。

「あの子犬がかわいいから」、「この犬種が流行っているから」という理由で、犬種を選ぶ人もいるかもしれません。ぬいぐるみや玩具を買うというのなら、それでもよいのでしょうが、共に生活をするパートナーを選ぶわけですから、飼ってみてから「思っていた犬と違う」ということでは、人間にとっても、犬にとっても、不幸なことになってしまいます。

みなさんは、結婚する際に顔や見た目だけでは相手を選ばないですよね? 犬を飼うということも同じだと思います。確かに、容姿が好きがどうかという点も大切です。でもそれ以上に、流行にとらわれず、特性を重視して犬種を選ぶことが、すばらしいパートナーに出会える最善の方法だと私は思います。


三好春奈(みよし はるな)
1971年千葉県生まれ。印刷会社勤務を経て、大井競馬場の厩務員に。いつも犬と一緒にいたいと願って、ペットシッターになる。1999年、テレビ東京の『テレビチャンピオン〜犬通選手権』で優勝。シッターや、しつけトレーニングを通じて、多くの犬と関わっている。1級愛玩動物飼養管理士、ペットシッターSOS船橋店代表。現在、鎌ヶ谷と美浜のカルチャースクールにて、「しつけ・飼い方教室」を開催中。一緒に写っているのは、愛犬の「富士丸」クン。