LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 喫煙していると、妊娠しにくいのでしょうか?
29歳の主婦です。結婚後2年間避妊していないのに妊娠しません。夫はかなりヘビースモーカーで、私も1日15本程度喫煙します。喫煙することが不妊と関係するのでしょうか。禁煙しようとすると、かえってストレスがたまるのですが。(長崎県・S.Y)


回答 喫煙は、不妊の原因のひとつです
米国疾病管理予防センター(CDC)によると、喫煙している女性は喫煙しない女性に比べて、

●月経不順になったり、月経痛がひどくなりやすい。
●閉経が早く訪れ、また更年期障害もひどくなりやすい。
●不妊症になる率が高く、妊娠する場合でも、妊娠までの期間が長い。
●胎児の発育が悪く出生時体重が少ない。
●妊娠中の合併症が多く、流早産、死産の率が高い。
●妊娠した場合の子宮外妊娠の発生頻度が高い。
●SIDS(乳幼児突然死症候群)の頻度が高い。

とされています。

以前より喫煙している人は喫煙しない人に比べて妊娠しにくい、といわれていましたが、最近それを裏付けるさまざまな臨床データが報告され、また基礎的研究から喫煙が不妊症の原因となるメカニズムも少しずつわかってきました。

2001年に米国の研究グループは、タバコの煙に含まれる有害物質が、卵子を死滅させることを指摘しました。精子と異なり、卵子は増えることがありません。女性がお母さんのおなかの中にいる頃に卵子数はピークを迎え、その後は減る一方ですが、喫煙はそれを加速させていることになります。喫煙者の閉経が、非喫煙者に比し、約1.8年早いというのも、喫煙により卵子が死滅することが一因と推測されます。

また、体外受精という不妊治療を行う場合に、女性の卵巣から卵子を体外に取り出すのですが、喫煙者では採取できる卵子数が非喫煙者に比べて少なく、結果として体外受精の妊娠率が低下するというデータがあります。このことも、喫煙により卵子が死滅してしまっている証拠といえるかもしれません。

喫煙は女性の生殖能力のみならず、男性側にも影響を与えます。いくつかの研究データでは、喫煙は、精子数の減少、精子運動率の低下、奇形精子の増加につながる、とされています。また喫煙はED(勃起障害)の原因になることもあります。昨年ヨーロッパ生殖医学会において、夫が喫煙していると、体外受精や顕微授精という不妊治療での妊娠率が、夫が喫煙していない場合に比べて、30〜40%も低くなることが示されました。

また、喫煙者の周りの人が吸わされる副流煙のほうが、喫煙者本人が吸う主流煙より、煙の中に含まれる有害物質は濃度が高いことがわかっており、ご本人が喫煙することにより、自身の健康と生殖能力をそこなうのみならず、それを吸わされるパートナーや周囲の方へも被害を与えていることになります。

喫煙は妊娠した場合のご本人と赤ちゃんへの害のみならず、卵子や精子自体に悪影響があることがわかってきていますので、「妊娠したら禁煙する」のではなく、将来子供が欲しい方は、「妊娠する前から喫煙はしない」のが賢明であり、ストレス解消法は喫煙以外の方法に求めるべきでしょう。最近では自分で禁煙できない方のために、医学的手段で禁煙することもできます。自分ではどうしても禁煙できない方は、医師にご相談ください。(2003.11.18)