LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 体温があまり上昇しないのですが、排卵をしているのでしょうか?
27歳、来年結婚予定です。結婚したらなるべく早く赤ちゃんをつくりたいと思っています。もともと生理不順で、友人から基礎体温を測ってみたらといわれ、1か月前から測り始めましたが、体温があまり上昇せず、上がっても10日もしないで月経が来ました。私は排卵をしていないのでしょうか? このような体温でも妊娠できますか? また、結婚して妊娠しようとするとき、基礎体温のどのあたりが妊娠しやすいですか?(埼玉・T美)


回答 排卵後の黄体ホルモン分泌が不足している可能性があります
基礎体温は朝目覚めたら、起き上がる前に寝床の中で婦人体温計を舌下に入れ、測定します。一般的に月経開始から排卵までは、個人差もありますが36.5度以下の低温が2週間ほど続きます。排卵し、卵巣にできた黄体からある一定以上の量の黄体ホルモンが分泌されると、基礎体温は低温から0.3度以上上昇します。

黄体ホルモンは妊娠の成立と妊娠の維持に必要なホルモンですが、同時に脳の体温中枢に作用して体温を少し上昇させる働きがあります。この基礎体温の高温は、12〜14日くらい続き、妊娠しないと体温は下降して月経がきます。高温の日数が10日未満の場合や、基礎体温の高温相と低温相の差が、0.3度以下の場合は、排卵後の黄体ホルモンの分泌が不足していることを示しており、黄体機能不全と診断されます。

T美さんの場合は、基礎体温が低温と高温の2相性になっているようですから、おそらく排卵はしていると思われます(厳密には排卵しているかどうかを診断するには、超音波検査などをしてみないと断定はできません)が、高温相の持続が10日未満となると、排卵後の黄体ホルモン分泌が不足している可能性があります。

しかしながら、基礎体温は毎周期必ず同じパターンとは限らず、今回がたまたま不調であった可能性もあります。もし、いつも基礎体温の高温相が短かかったり、結婚後避妊しないでしばらく経っても妊娠しないようでしたら、婦人科を受診して検査・治療を受けることをお勧めします。

T美さん程度であれば、治療は比較的容易で、足りない黄体ホルモンを内服薬や注射で補充するか、高温相で卵巣から黄体ホルモン分泌を促進する働きのあるHCGという注射を打つか、または、排卵誘発剤を内服して、結果的に排卵後の黄体ホルモンの分泌をよくするという方法もあります。また、排卵は基礎体温の低温相の最終日か、少し上昇しかけたあたりである確率が高いです。

しかしながら、これはあくまでも目安であり、排卵してからしばらくして上昇することもありますし、頻度は低いながら完全に上昇してから排卵することすらあります。したがって妊娠を希望する場合に、基礎体温のみで妊娠しやすい性交の日を決定するのは難しいのです。排卵日のみに必ず体温が少し下降する方は、それを目安にできますが、排卵日に必ず体温が下降するとは限らず、体温が完全に上がった時にはもう排卵が終わっている場合が多いのです。

排卵後の卵子の生存期間は、半日から1日程度といわれており、排卵翌日の夜になってから性交渉を持ってもすでに遅い可能性が高くなります。このことから、基礎体温のみで、排卵のタイミングを完全に予測するには無理があり、あくまでも排卵が起きている可能性が高いか、とか、妊娠に必要なホルモンがある程度は出ていそうかどうかなどを知る目安にとどめる必要があります。

面倒であったり、基礎体温測定がかえってストレスになる方もいらっしゃるようですが、慣れてしまえばそれほど困難なことでもなく、また、病院に行くことなく自分ででき、見方を覚えればご自分のホルモン状態を知ることができますので、もう少し続けてみてください。また、病院を受診することになった場合には、基礎体温表をつけてあると、排卵の有無の推測や、ホルモン分泌について診断が容易になりますので、受診時にはぜひ基礎体温表を持参して、医師にお見せください。(2003.6.16)