LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 セックス時の我慢できない痛みに、悩んでいます
私は今25歳の独身女性です。これまで恋愛には消極的でしたが、最近恋人ができ、初めてセックスを経験しました。 初体験は痛みがあると聞いていたので、多小の苦痛は覚悟していたのですが、挿入時は膣の入り口が引き裂かれるような激痛で、とても続けられるものではありませんでした。ほんの少し挿入しただけで激しく出血し、中断せざるを得なかったのです。その後も何度かセックスを試みていますが、いまだに痛みが激しく、半年も経過しているのに、一度としてまともに行為ができたことはありません。私の体は、どこかおかしいのでしょうか?(K.S.・愛媛・会社員)


回答 処女膜強靭症なら、簡単な治療で治ります
K.S.さんのように、痛みで性交がうまくできないケースで、女性側に考えられる原因は、処女膜や膣に生まれつき問題がある場合と、精神的な問題が背景にあり性交が障害される場合です。

前者で処女膜が多少厚い程度の軽症の場合には、緊張が取れ、潤滑液が充分に分泌された状態で性交をすることで、解決されることもありますが、病的なもので最も頻度が高いのは処女膜強靭症(しょじょまくきょうじんしょう)です。処女膜強靭症は処女膜が生まれつき厚いために、膣の入り口が非常に狭くかつ伸びにくくなり、そのために性交の際の挿入が困難になる状態です。K.S.さんの場合も挿入時に激痛があり、ひどく出血することから、この「処女膜強靭症」であることがもっとも疑われます。

処女膜強靭症は処女膜の切開や切除で簡単に治ります。局所麻酔でできるので日帰り手術が可能です。他に、先天的なもので処女膜の病気としては、処女膜閉鎖症(しょじょまくへいさしょう)というものもあります。この場合は、思春期になっても無月経のままで、毎月周期的に下腹部痛がある、ということで受診されるケースが多く、容易に診断がつき、治療も切開手術で簡単にできます。

また、希に膣が生まれつき非常に狭い場合や、膣の一部が閉鎖している場合、膣に中隔(ちゅうかく:仕切りのような壁、膜)がある場合も性交痛の原因となります。これらも手術で治すことができます。あるいは、極めて希ですが、生まれつき膣が欠損している場合もありえます。膣欠損症(ちつけっそんしょう)では膣の形成術を行うことにより性交渉が可能になります。

次に精神的なものが背景にある場合としては、「初めての性交渉は痛い」とか「出血する」という先入観があり、性交の際の緊張や恐怖により、性的な興奮によって分泌される潤滑液が不充分、またはまったく分泌されず、性交に際して痛みを生じることがあります。また、このような心理的な背景があると、性交時に膣の入り口近くの筋肉が無意識に収縮し、挿入が困難になってしまう状態があり、これを膣痙(ワギニスムス)と呼びます。

性交時の潤滑液が不充分な場合には、挿入前にあせらず充分な時間をかけて受け入れる準備状態を作ることが大切であり、はじめは市販もされている潤滑油の働きをするゼリーを利用してみるのも対策のひとつです。痛みなく性交ができるようになれば、恐怖や緊張もとれて、このようなゼリーも不要となってくる場合が多いです。

重症のワギニスムスに対しては、まず自分の性器を知るために、意識的に性器を見たり触る機会をつくり、指を1本、そして2本挿入してみる、というところから始める必要があります。治療にはパートナーの協力が不可欠です。また、専門家によるカウンセリングや精神療法を要する場合があります。K.S.さんの場合には、精神的な問題も多少関与しているかも知れませんが、性交時の痛みと出血の原因は、処女膜強靭症が最も疑われ、しかもこれは簡単な治療で治りますから、まず婦人科を受診して原因を調べてもらうとよいでしょう。(2002.12.15)