LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 子宮筋腫はどんな外科的治療法がありますか? 手術後のセックスは可能ですか?
大切な彼女が子宮筋腫で、外科的治療が必要と診断されました。子宮を残すかどうかで、いろいろ悩んでいますが、これらの手術で、従来どおりSEXが楽しめるかも気がかりな点です。手術はSEXに影響はあるのでしょうか? また、子宮の全摘出、核摘出で違うのでしょうか? 急いで手術を考えてはいませんが、体に負担がかからない方法を選べれば、と思っています。(愛知・会社員・Sさん)


回答 筋腫核のみの摘出と子宮全摘があります。傷が落ち着けば、性交渉も可能です
子宮筋腫の一般的な治療法として、薬物療法と手術療法があります。前者は、閉経した状態をつくり子宮筋腫を縮小させる治療法が主流ですが、あくまで一時的に縮小させるだけであり、治療が終了してしばらくすると元に戻っていくため、子宮筋腫の根治療法ではありません。

最近では、これらの治療に加えて、子宮筋腫を栄養している血管を塞いで子宮筋腫を萎縮させる方法(子宮筋腫の動脈塞栓術)も行われ始めています。まだ日本では実施できる施設がごくわずかで、安全性が完全には確立したとはいえないこと、自費診療であることなど、問題点もありますが、開腹しないで済み入院もほとんど必要ないなどメリットもあります。

子宮筋腫で手術する場合には、子宮筋腫の筋腫核(筋腫のこぶ)だけを摘出する方法と子宮そのものを全摘する方法があります。どちらにするべきかを選択する上で最も重要になるのは、今後子供を作る予定があるかどうかです。もし将来子供を作りたいのであれば、前者の選択しかありません。子宮を全摘してしまえば、当然のことながら自分で子供を産むことはできなくなります。一般的には、まだお子様がいらっしゃらず、年齢が40歳すぎくらいまでの方でしたら、今後の妊娠の可能性を残すために、子宮全摘術ではなく子宮筋腫核出術を行うことがほとんどです。

次に術後の生活についてですが、核出術では、お腹の傷が落ち着けば、(術後およそ1、2か月)、生活は性交渉も含めてまったく普通にできます。子宮全摘術の場合には、膣の奥にある子宮がなくなっていますので、その部分を縫い合わせています。つまり、術後は膣の一番奥の部分が、縫い目になった状態です。日常生活は核出術と変わりなくできますが、ペニスが当たる膣の奥の縫合部が完全にくっついていなければならないため、性交渉は、最低でも2か月以上、縫合後の状態によってはさらにそれ以上控える必要があります。それから初めのころは膣断端への刺激を避けるため、あまり深く挿入しないほうがよいと思われます。

子宮全摘の際、通常は子宮と膣の境目に切開を入れて子宮を摘出し、膣を縫い合わせますので、膣の長さは術前とほとんどかわりません。どちらの手術にするかについて、その他考慮するべきことは、核出術だと、子宮自体は残ることになりますので、子宮筋腫が再発する可能性があるということです。全摘であれば、当然手術により子宮筋腫という病気に関しては完治することになります。

手術の方法ですが、お腹を開ける場合(開腹術)と、腹腔鏡で小さな穴だけをお腹に開けて手術する場合(腹腔鏡下手術)があります。腹腔鏡下で手術できれば、お腹の傷も小さく、また入院日数も短くて済みますが、腹腔鏡下で容易に手術できるかどうかは、子宮筋腫の大きさや位置にもよります。子宮筋腫の手術に関しては、従来から行われている開腹術のほうが、手術時間も短く、かえって出血量も少なくて済む場合も多いです。

また、全摘の場合には、子宮筋腫の大きさ、過去の開腹手術の有無、お産をしたことがあるかどうかなどにより、お腹にメスをいれずに、膣のほうから手術(膣式子宮摘出術)することも、状況によっては可能です。(2002.9.25)