LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 夫婦ともステロイド剤を使用したことがあるけど、胎児に影響はある?
私は今年結婚し、2年後に出産を考えている28歳です。3年前に突発性難聴にかかり、ステロイドの点滴と内服をしていました。最近、ステロイドの胎児に対する悪影響を知り、とても不安になっています。ステロイドは3年前に2週間ほど続けて使用し、難聴に対する効果がなかったので、今はやめています。だいぶ前のことなので、もう胎児には影響はないでしょうか? また、主人も最近アトピーにかかり、1か月くらいステロイドを使用していました。母親だけでなく父親の薬物使用も、胎児に影響が出ることがあるのでしょうか? もし影響があるとしたら、どのくらい前に薬物使用をやめたらいいのか、教えてください。(京都・会社員兼主婦・28歳)


回答 妊娠前の使用であれば、影響はありません。男性側からの影響もごくわずかです
まず、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)の胎児への影響についてですが、動物実験では、妊娠初期に投与すると胎児に先天奇形が発生することがあると報告されていますが、ヒトにおいては、奇形発生との因果関係はないという報告が多いです。もちろん、妊娠初期のステロイド剤の投与は、治療上やむを得ない場合を除き、安易に行うべきではありません。

次に、ステロイド剤の使用時期と、胎児への影響についてですが、妊娠前の使用については、胎児への影響はまずありません。まして今後妊娠された場合、3年も前のステロイド剤投与の既往が胎児に影響するとは考えられません。

一般的に薬剤を使用しながら妊娠した場合に、胎児に影響が出る可能性がある時期は、妊娠2か月(妊娠4週)以降です。とりわけ胎児への影響が強く出るおそれのある絶対過敏期(妊娠4週〜7週)は注意を要し、その後の相対過敏期(妊娠8週〜16週)も控えておけば安心です。

さらに用心するなら、妊娠したいと思う月経周期の排卵後は控えておけば、悪影響はまず考えられないことになります。実際には受精後2週間(妊娠3週末まで)以内に、薬剤の影響を受けた場合は、着床しないか、流産として淘汰されるか、あるいは修復されて健児を得るといわれており、奇形のような形態の異常は出ないはずです。

ただし、残留性がある薬剤の場合は、その薬剤の残留期間に応じた注意を要します。

男性側への投与が、胎児に影響を与える可能性がある薬剤はごくわずかです。男性側のステロイド剤使用により胎児に悪影響が出たという報告は、これまでないはずですから、アトピー治療のためにステロイド剤が必要であれば、ご主人がステロイド剤を使用中に奥様が妊娠しても問題ありません。(2002.7.4)