忘年会にクリスマスパーティー、大晦日に年越しそばを食べたらもうお正月。おせち料理を食べたら初詣……年末年始はいろんな行事がぎっしり。でも、そこには当然マナーも存在します。年末年始これだけは知っておきたい大人のマナー。あなたはいくつわかる?

◆社会人になって初めて会社の忘年会に参加します。よく「本日は無礼講で」と重役とか社長が挨拶をしますが、ほんとうに学生時代のように羽目を外してもいいのでしょうか?

もしあなたがその会社で出世したいのなら、たとえ無礼講と言われてもおとなしくしているのが賢明です。良くも悪くも、日本は本音と建前の社会。両方をうまく使い分けられるようになって、初めて一人前と認めてもらえます。忘年会や新年会といった、会社主催の宴会やパーティは、社長や重役をはじめ部長や課長など、あなたより偉い人がたくさん出席します。はっきり言ってこういう場は会社の延長だと思ってください。当然、守るべきことはたくさんあります。

鉄則1、はしゃぎすぎないこと。無礼講をいいことにひとりだけ酔っぱらってしまい、周りの迷惑もかえりみず大はしゃぎ。上司の不興を買うこと間違いありません。

鉄則2、会社や上司、同僚の悪口を言ったり、酔った勢いで上司に喧嘩をふっかける。同僚の男性社員にからむ……このタイプは宴会でいちばん嫌われます。

鉄則3、ただし、おとなしくしていればいいというものではありません。このへんが宴会の難しいというか、面倒なところ。ひとり黙々とお酒を飲み、誰かが話しかけてきてもろくに返事もしない……こういう協調性の無い行為は特に宴会の席ではやってはいけません。楽しくなくても、それを顔に出してはダメ。逆に誰かれ構わずお説教するのもNG。気をつけましょう。

鉄則4、あきらかにゴマすり行為ととられるようなことはしない。必要以上に上司にお酌をする、媚を売る、男性社員を挑発する……こうした振る舞いは女子社員全員を敵に回すことにもなりかねません。

鉄則5、出席した以上は、たとえどんなにつまらない宴会でも楽しもうとする努力をすること。重役や上司がさむ〜いおやじギャクを言っても決してバカにしない。無理に笑うことはないが、あからさまに軽蔑した態度はとらない。

ある会社の忘年会で、「無礼講で楽しんでください」と重役が宣言したとたん、全員がお酒をがぶ飲み。そして、酔うほどに会社や上司の悪口が出始め、20分後とうとう宴会場は一転、修羅場と化し忘年会はわずか30分で解散してしまったとか。LADYWEBの結論としては<月並みですが、お酒はほどほどに>と言っておきましょう。



ミニ知識
忘年会」というイベントは日本独自のもので、欧米にはないようです。その代わり欧米ではクリスマス関連の行事がたくさんあります。だいたい欧米では家族や隣近所での行事が多く、日本のように会社単位で宴会やパーティを催すことはあまりないようです。

江戸時代、庶民の間で1年間の憂さを晴らす目的で、宴会らしきものが開かれたという記録がありますが、おそらく隣近所の人たちがささやかに集まって催されたミニ宴会だと思われます。現在のような「忘年会」や「新年会」が催されるようになったのは、明治以後。官僚や学生、会社員などが始めたのがルーツとされています。



◆30年ローンを組んでマイホームを買いました。新居で迎えるのにふさわしい「正しいお正月」の迎え方、過ごし方を教えてください。

そうですか、30年ローンですか。いや……素晴らしい。心からお祝い申し上げます。さて正しいお正月の迎え方ですが、新居が一戸建てかマンションなのかによって、また住んでいる地方によっても違ってきますので、ここではごく一般的な方法をお教えしましょう。

【正月飾り】
正しいお正月といえば、まずは「正月飾り」をします。昔から日本では正月になると、一年の幸せを運んでくる「歳神様(としがみさま)」を迎えるため、家の内外をさまざまに飾り立てます。その代表が「門松」です。でも、実際問題として大きな門のある大邸宅は別として、普通の家では伝統的な門松はまず立てません。もちろん門がなくても、玄関わきに立てて一向に構いませんが、必ず玄関の左右に対になるように立ててください。最近はホームセンターや量販店などでミニチュアの門松を売っていますので、それを利用すればマンションなどでも気軽にお正月気分が味わえます。

門松を飾ったら、次は玄関にしめ飾りを付けます。年末になると街角に正月飾りの店が出てくるので、しめ飾りはそうした店で購入します。門松、しめ飾りが済んだら、床の間に鏡餅を置き、富士山や鶴亀、日の出などのおめでたい絵や書を飾ります。さらに生け花、お屠蘇の器、香炉などを置けば完璧です。ただし、最近は床の間のない家が多く、当然、掛け軸などもないのが普通です。リビングのサイドボードやテーブルの上に、お正月らしい花を飾ったり、スーパーやコンビニで売っている鏡餅を飾るだけでも、充分新年を祝うことになります。正月飾りはお金をかけ豪華にすればいいわけではありません。

LADYWEBの結論としては<自分の暮らしに見合った、無理のない祝い方がいちばん>ということ。ちなみに、こうした正月飾りは12月26〜30日までに飾ります。また、大晦日に飾るのは“一夜飾り”といって昔から縁起がよくないといわれています。




ミニ知識
お正月といえば、おせち料理。最近ではデパートや有名料理店のおせちに人気があるようですが、昔はどこの家でも手作りしていました。知らなくてもまったく困ることはありませんが、おせち料理を詰める重箱は四段重ね(地方によっては五段重ね)が本式です。上から一の重、二の重、三の重、与の重(四は死に通じるため使いません)と呼び、外側を黒、内側を朱色に塗られた重箱を使います。

詰める料理は一の重に「祝いざかな」として、カズノコや昆布巻きなど、酒の肴を詰めます。二の重には「口取り」としてきんとん、伊達巻きなど甘い料理を詰めます。三の重には焼き物、そして与(四)の重には煮物を詰めます。最近は伝統的なおせち料理に対抗するように、洋風や中華風の料理をお正月料理として食べる家庭も増えています。いずれにしても、お正月はゆったりのんびりと過ごしたいですね。



◆正しい初詣の作法なんてあるのでしょうか?

新年を迎えて初めて神社やお寺にお参りすることを「初詣」と言います。昔は自分が住んでいる土地の氏神様(神社)にお参りをしましたが、時代とともにそうした考えは薄らぎ、今ではどこの神社仏閣にお参りしてもいっこうにかまいません。

さて、正しい初詣の作法ということですが、はっきり言ってそんなものはありません。古来から、初詣は大晦日の夜から元旦の朝にかけてお参りするもの、とされていますが、現在ではそんな決まりはなく、紅白歌合戦や格闘技番組をゆっくり見てからでもいいし、除夜の鐘を聞いてから家を出てもかまいません。あるいは夜が明けて元日の昼間、さらには松の内(1月7日まで)のお参りなら、すべて初詣となります。

ところで意外と知られていないのが神社での参拝の仕方です。細かいことを言えば、初詣に出かけるときには新しい下着や衣服に替え、お参りの前に手水(ちょうず)を使って手を洗い口をすすぎ心身を清めます。そして神前に進みお賽銭を入れます。金額はいくらでもかまいません。その後、鈴があればひもを引いてガランガランと鳴らし、2回お辞儀をし2回柏手を打ちます。最後にもう1回お辞儀をして終わりです。願い事は柏手のあとにします。

LADYWEBの結論。初詣に特別なしきたりはナシ。好きな時、好きな神社仏閣にお参りすればよし! ようはお参りする心、気持ちです。





◆年賀状を送っていない人から、元旦に年賀状が届きました。すぐに返事を書いたほうがいいですか?

すぐに返事を書きましょう。ただし、よく「早々に賀状を頂戴し……」などと書く人がいますが、これはやめたほうが無難です。普通に「明けましておめでとうございます」的な年賀状を送ります。早々に頂戴し……と書くのは、実はあなたのことを忘れていました、ということと同じ意味となりかえって失礼になります。もっとも、そんなことで怒る相手はいないでしょうが……。

反対にこちらが年賀状を送ったのに返事がない、というケースもありますが、こればかりは返事を催促するわけにはいかないので、待つしかないようです。

もうひとつ。こちら側が喪中の場合は、年賀状を送ることも受け取ることもしないのが普通ですが、万一、年賀状を受け取ってしまったら、すぐには返事は出さないようにします。そして松の内が明けた1月中旬以降「寒中見舞い」として、喪中で年賀状を失礼したことをお詫びし、改めてご挨拶をします。たまに「今年は暖冬だから寒中はへん」などという人がいますが、たとえ暖冬でも寒中は寒中。あまり現実的にならないようにしましょう。




◆お正月といえばお年玉。甥、姪が多い私としては頭が痛い問題です。独身で会社員だからお金を持っていると思われているようですが、実はボーナスも給料も減っているんです。

独身でお金持ちのお姉さんと思われているようですね。年に1度のことだからお年玉ぐらいでケチケチしないこと……と言いたいのは山々ですが、実際問題ボーナスが減らされたり給料が減らされたり、本当に今の日本はどうなっちゃったんでしょうね。

それはそうとして、お年玉ですが、はっきり言ってあなたが結婚して(していなくてもいいんですが)1日も早く、たくさんの子供を産んで今までの元をとるしか方法はありません。

今どきのガキ……じゃなくて、お子さんはマナーの本が書いてるように3000円なんてあげてもお礼どころか「ええーっ、これっぽっち!」とあからさまに不満を言います。兄弟姉妹や親戚の子供じゃなかったら殴ってやるとこです。

LADYWEBの結論としては<小学生でも高校生でも、面倒だから全員一律1万円>でいいと思います。そのかわり、あと何年かしたらたっぷり元を取りましょう。お金持ちのお姉さんを演じるのもラクではありません。




◆意外とお正月って暇なんですよね。何かいい暇つぶしってないですか?

久しぶりに童心に返って「羽根つき」とか「たこ上げ」なんてどうですか? 寒い外はイヤという不精なあなたには、おこたに入って「人生ゲーム」とか「モノポリー」「百人一首」「トランプ」がおすすめです。

そうそう。お年始に行く、なんていう手もありますね。今でこそ廃れてしまいましたが昔はお正月になると、実家、親戚、お仲人さんなんかの家に年始回りをしたものです。年始回りの方法は、タオルや菓子折りなどを持って一軒一軒訪問し、ご挨拶をします。基本的には玄関でおいとまをしますが、たいていの家では「上がって一杯」と誘われます。こう言われたら、素直にごちそうになります。

ただし長居は無用。短めに切り上げます。この際気をつけたいのは、年始回りは元旦を避ける、ということ。そして訪問の約束を取り付けておくとなおいいですね。



(回答者/マナー評論家・松下華繪、取材・金子保智)