知っているようでいて、意外と知らないのが贈り物のマナー。季節のギフトにはじまって病気お見舞い、出産祝い、就職・入学祝い……さまざまな場面での贈り物のマナーがあります。今回は、お見舞いの贈り物のマナーをLADYWEBが本音でお教えします。

◆上手なお見舞いの方法ってありますか?

お見舞いに上手も下手もありませんが、これだけは守ってほしいいくつかの事柄はあります。そのいくつかを守れれば、あなたはお見舞いの上級者といえるでしょう。まず、お見舞いに行く時間ですが、言うまでもなく病院の面会時間内に限ります。できれば事前に何日の何時ごろ何人で伺う、ということを家族の人に伝えておきましょう。当日はなるべく少人数で、それも手短に見舞うようにします。ダラダラと何時間もおしゃべりをして病人や家族を疲れさせてはいけません。15分を目安に病室を後にしましょう。とくに大部屋に入院している人を見舞うときは、他の入院患者のことも考え、決して大声を出さない、馬鹿笑いをしない、帰り際には同室の他の人に対しても「お大事に」の一言を添えて退室する、といったマナーはぜひ守りましょう。





◆お見舞いのとき何を持っていくのがいい?

お見舞いに行く時には何を持っていこうか、誰でも悩むところです。無難なところではお花ということになるのでしょうが、鉢植えは根づく=寝つくをイメージさせるからNG。椿の花はポロリと首から落ちるからこれまたNG。百合は匂いがきついからダメ、シクラメンは死と苦をイメージさせるからダメ、白い花はお葬式に使われるからダメ……と意外にお花は制約が多いもの。それに個室ならともかく、大部屋の場合お花を置く場所も限られてしまうし、切り花は寿命が短いし、他の見舞客もお花を持ってくるでしょうし……というわけで、親しい人のお見舞いにお花を持っていくのはやめましょう。もしお花を持っていくなら、小さめのアレンジメントを持っていくのがいいでしょう。これならあまり場所を取らずに、また花瓶の用意もいりません。

また、果物やお菓子なども病気によっては、食べられないことも多く、注意が必要です。たまに豪華な果物の詰め合わせを持ってお見舞いに行く人もいますが、これは時に大きな迷惑となります。私が知っているあるご家族は自宅が病院から遠く、重たい果物を両手にいっぱい抱えて、1時間半満員電車に揺られて帰りました。持ってくるほうは「患者さんが食べられなくても、家族の方が食べればいいから」と、気楽に考えているようですが、入院患者の家族にとっては、時にたいへんな迷惑だったりすることもあるのです。

結局のところ、お見舞いの際何を持っていくかは、入院している人とあなたとの関係、付き合いの度合いなどで変わってきます。会社の同僚や親友、同級生など日常的に親しくしている間柄なら、本や音楽CD、ゲームソフトなどが喜ばれる、とマナーの本などには書いてありますが、必ずしもそうではありません。本は個人によってミステリーが好き、恋愛小説が好き、漫画が好き、あるいは本はまったく読まない、など好みはバラバラです。音楽にしても同じです。ゲームにいたっては全く興味がない、という人だっているでしょう。私が知っているある人は、お見舞いに本をいっぱい持ってこられた時、「せめて入院している時くらい、ゆっくり休ませてよ」と、内心腹が立ったといいます。

そこでLADYWEBなりの結論です。やはりお見舞いの時に持っていくのは、現金が無難です。といっても、何も1万円も包みなさいというわけではありません。1000円でも2000円でもいいのです。または、病院内で現金代わりに使用できる、「院内カード」のようなものでもかまいません。入院は本当にお金がかかります。入院日や治療費ばかりか、パジャマ、タオル、ティッシュ……余分なお金がどんどん出ていきます。こんなときに何より嬉しいのはお金、現金です。高価なメロンより小額でもいいから現金……。実はそれが、入院患者を持つ家族の本音なのです。ちなみにお見舞い金を包むのは普通の白い封筒、または市販の見舞用袋にします。のしは付けません。




◆上司が肝臓病で入院しました。お見舞いはいつ行ったらいいですか?

会社関係のお見舞いはちょっとしたコツがいります。まず入院した人とあなたの関係が重要になってきます。入院した人があなたよりはるかに上の上司、たとえば部長やそれ以上の上役なら、必ず課長や係長の動きを確認してください。いくらあなたが個人的に部長と親しくても、この場合は課長や係長、主任などあなたより役職が上の人を差し置いて病院に駆けつけてはいけません。上司のメンツをつぶしてしまうからです。こんなときは部署の方針、上司の方針に従ったほうが賢明です。良くも悪くも会社はタテ社会。順序を間違えるととんだ恥をかいたり、ときには出世に響くことだってあります。気をつけましょう。


◆自転車でころんで腕を骨折。2週間ほど入院したのですが、その時たくさんの友人、知人からお見舞いをもらいました。お返しはどうしたらいいでしょうか?

病気やケガが治り病院から退院したら、なるべく早めにお見舞いをくださった方に、おかげさまで病気(またはケガ)が全治しました、との挨拶を添え快気祝いを届けます。贈る品物としては病気やケガが後まで残らない、という意味から使ってしまう品物(消え物)にします。たとえば石鹸や洗剤、菓子折り、食品、海苔などがいいでしょう。価格はいただいた額に関係なく1000円程度でかまいません。




◆同級生の家が水害で全壊しました。お見舞いはどうしたらいい?

いつやってくるかわからないのが地震や水害、火事などの災害です。できれば自分の周囲では起こってほしくないものですが、不幸にして知人や友人が災害に見舞われたら、どうすればいいのでしょうか。まずは正確な情報を知ることです。といっても地震の直後は電話がかかりにくく、気ばかりあせるかもしれません。でも時間がたてば必ず現地の様子はわかってきます。あせらず正確な情報を待ちましょう。

さて、ご質問の同級生の家が水害で全壊してしまったと知ったら、まずは電話、メール、手紙……どんな手段でもいいですから、災害にあったことへの慰めと今後の励ましを伝え、何か不足しているものはないかストレートに聞いてかまいません。品物としては日用品、衣類などが不足していることが多く、それ以外ではやはり現金を送るのがベストです。また災害にあった家の後片付けを手伝うのも方法ですが、中には嫌がる家もあるので親切の押し売りはいけません。



◆友人が乳がんで入院しました。お見舞いはいつ行ったらいいですか?

盲腸炎で1週間入院、というなら話は簡単ですが、乳がんで入院した友人を見舞うのはいつがいいか? 実はこれが意外と微妙な問題なのです。基本的に病気見舞いの時期は病状が安定し、回復しつつあるころがベストです。ただしこの質問のように、お見舞いする相手の病気ががんや心臓病などシリアスな場合はちょっと違ってきます。

近年は医療が飛躍的に進歩し、がんも不治の病ではなくなりました。とはいえ、日本人の死因の1位は相変わらずがんです。そして患者が告知を受けているなら少なからずショックを受けているはずです。こんな時にお見舞いに行って「大丈夫。すぐ治るから」と無責任に言うのは絶対にいけません。すぐにお見舞いに行ってあげたい気持ちはわかりますが、まずは入院した人の家族や親しい人に様子を聞きましょう。その結果、お見舞いに行っても差し支えないようなら面会時間内に出かけます。ただし、手術を控えているならその前や後は遠慮します。1週間やそこらで退院できる病気ならそれほど気をつかう必要はありませんが、入院が長引くようなら、とりあえずお見舞いはせず手紙などで励ますようにし、様子を見てお見舞いに出かけます。また、長期の入院や急激な病変、治療の影響などで容貌が変わってしまったりすることも多々あります。とくに女性の場合、そうした姿をたとえ友人といえども見られたくない、と思うのは当然でしょう。

これはやはり私の知り合いの話ですが、がんで入院した時、多くの人から「頑張ってね」と言われ、腹が立つというより悲しくなったと言っていました。「これ以上ないひどい状態のときに、どう頑張れというのか?」という気持ちになったそうです。シリアスな病気を抱えた人にとって、健康な人が簡単に口にする「頑張ってね」の言葉は、時にとても無責任で、自己満足の言葉に聞こえてしまうのです。こういったことから、人を見舞うというのが、いかに難しいかおわかりいただけると思います。基本は、相手の立場に立って考えること。それができないのなら、かえってお見舞は逆効果……ということを知っておいてください。


(回答者/マナー評論家・松下華繪、取材・金子保智)