ある日突然、夜昼問わずに飛び込んでくるのが訃報(ふほう)です。あんなに元気だったのに……と驚くこともあれば、日頃ほとんど付き合いがなく、なぜ私に知らせたの? と首をかしげたくなるような訃報もあります。そこで、マナーの本には載っていない、お葬式やお通夜にまつわる“本音のマナー”をお届けしましょう。
■恥ずかしい話なのですが、私はこの歳(27歳)にもなってもお通夜とお葬式、告別式の区別がつきません。訃報を聞いたらいったいどこに出席すればいいのでしょうか?

できるものならお通夜や告別式は辞退したいところです。とはいえ、社会人である以上そんなわがままはいえません。さて、ご質問のお通夜、お葬式(葬儀)、告別式のいったいどこに顔を出せばいいのかということですが、はっきりいってどこでもかまいません。この時に大切なことは、故人とあなたとの付き合いの程度です。年賀状や暑中見舞いの葉書をやり取りするだけで、顔を会わすことはほとんどない人なら、弔電(電報)を送る、あるいは告別式のときお花を届ける程度で問題はありません。

また、近親者や親戚、親しい友人・知人の場合は、できるだけお通夜、葬儀、告別式すべてに出席するようにしましょう。問題は弔電やお花を届けるだけでは失礼にあたる、かといって、すべてに出席するほどではない関係の人の場合でしょう。たとえば会社の取引先、それほど親しくはなかった学生時代の友人、友人・知人の両親や祖父母。いったいどこに顔を出せばいいのか迷ってしまいます。まず会社関係の場合ですが、上司や総務の人に判断を仰ぐのが無難です。もし、あなたが会社を代表して出席する場合は、お通夜にします。なぜなら、葬儀・告別式はだいたい昼間行われるのに対して、お通夜はほとんどが夜6時〜7時ごろから始まり、1〜2時間で終わるからです。会社勤めの人にとって昼間は貴重な時間でもあり、喪服に着替えるのも実は大変なこと。あまりマナーにしばられる必要もないと思います。その他のケースも基本は同じです。要はあなたとどの程度のお付き合があったかという点ですから、お通夜、葬儀、告別式、あなたの都合のいい時に顔を出してかまいません。

■年末になると、誰それの喪中につき年賀状を欠礼します……という葉書が届きますが、実際のところ年賀状を出すのは失礼なの?

ふつうは「年賀欠礼状」は、両親やきょうだいなど、生活を共にしている人が亡くなった人から送られてきます。ただし、現実にはリストから漏れる人もいれば、うっかり発送を忘れてしまうこともあります。また、相手が喪中ということすら知らない(知らされていない)ことも少なくありません。ですから、以前ほど欠礼状が届いたからといって年賀状を送っても失礼には当たりません。

ところで、相手が喪中だと知らずに年賀状を送ってしまったらどうするか? マナーの本などには、「松が明けたらお詫びの言葉を添えて手紙を送りましょう」などと書いてありますが、実際はそこまでする必要はないと考えます。年賀状を送る時期(12月末ごろ)までに、相手から欠礼状が届かず、かつ喪中であることも知らなくて年賀状を送ってしまっても、それほど気にする必要はありませんし、相手も気分を害することはありません。昔ほど喪中という期間を重んじなくなったことも影響しているのかもしれませんね。たとえ喪中でも、懐かしい人からの年賀状は嬉しいものと考えればいいのでは……。

■同じ「年賀状欠礼」に関する質問です。先日、上司から欠礼状が届いていたのに、うっかりコンピュータの住所録から削除するのを忘れてしまい、思いっきり派手な年賀状を送ってしまいました。どうしたらいいですか?

この場合は100%あなたのミス。素直に謝罪しましょう。誤って年賀状を送ってしまったと気づいた時点で、上司の方に事情を綴った手紙(葉書でも可)を書きます。その際、自分のミスを謝罪したうえで、喪中の上司に対するお悔やみの言葉、新年も変わらぬご指導をお願いする旨書き添えます。たとえ上司が鷹揚な人で、細かいことを気にしない性格の人であっても、マナーはマナー。放っておいてはいけません。こうしたお詫びは必ず手紙か葉書にします。電話、ファクス、メールなどは失礼にあたるのでやめましょう。

■高校時代の同級生のご主人が40歳で他界しました。でも私がそれを知ったのは亡くなって半年も過ぎだころ。しかも他の同級生から間接的に聞きました。どうしたらいいの?

この質問は基本的にマナー、というより感情の問題だと思います。高校時代の同級生とあなたとはどの程度のお付き合いなのでしょうか。もし故人とも面識があり、あなた自身もお悔やみを述べたいと思うなら、同級生の連絡をとりお線香をあげたいという気持ちを伝え、都合のいい日に訪問します。同級生とそれほど親しくなく、直接知らせも受けていないのなら、何もする必要はありません。ポイントは同級生のご主人が亡くなったとき、あなたに知らせがなかったのは、単に知らせるべき人のリストからもれたのか、それとも先方があなたに知らせる必要がないと判断したか、です。とはいえ、実際にはその真偽を確かめるのは難しいもの。あまり積極的に動かないほうがいいでしょう。

■2年に一度、同窓会で顔を会わす程度の知人のご主人のお父さんが亡くなった、と連絡がありました。しかも相手の住まいは北海道。葬儀には出席したほうがいい?

結論からいえば、出席する必要はありません。知人のご主人ならともかく、ご主人のお父さんといえば、たぶん面識もないでしょう。もちろん、社会人なら一面識もない人のお葬式に出ることもあるでしょう。でもそれは会社の取り引き上、義理でやむを得ず列席しなければならないケースなどがほとんどで、この質問とは性質が違います。一般的にお通夜、告別式は故人が住んでいた地域で行われることが多く、故人とよほど親しい間柄か、親戚関係以外は欠席しても失礼にはあたりません。それでも気になるようなら、お花を届けるとか、弔電を送ります。いずれにしても、お通夜・告別式には招待状というものはなく、出席するか欠席するかは、あなた次第。よく考えて行動しましょう。

■私は宗教には関心がなく、数珠も持っていません。持っていたほうがいいですか?

日本のお葬式の大多数は仏式、つまり仏教によるお葬式です。ですから、結論からいえば数珠は持っていたほうがいいと思います。ただし、高価な数珠は必要ありませんし、数珠の使い方を知らなくても全然かまいません。お葬式の場でただ手に持っているだけでいいのです。つまり格好がつけばいいのです。数珠はデパートや仏具店などで購入できますし、喪服を買えば「おまけ」としてついてくることもあります。

■新興宗教に入っている友人が亡くなりました。葬儀に出席する場合、新興宗教とは関係のない私もその宗教に合わせなければならないの?

微妙な問題ですが、結論からいえば合わせる必要はありません。あなたが亡くなった友人を心から見送りたいなら、あなたの流儀で出席しましょう。ただし、故人が信じていた宗教に疑問があったり、葬儀の出席者が同じ新興宗教の信者ばかりで戸惑うようなら、欠席してもかまいませんし、出席者の後ろからそっと見送ってもかまいません。

(回答者/マナー評論家・松下華繪、取材・金子保智)